再臨阻みし薄汚れた翼の堕天使
初恋の人が死んだあの日から、私は人間が人間で在るために必要な物を失った。
愛しの人も恋心も、なにもかも。
私はもう恋をすることは出来ない。
私はもう幸せにはなれない。
そんなことになったら、自責の念で潰れてしまうから。
『絶対殺すの効果により、サダカのポイントを44にする、さらにイベントカードお別れの時を発動、今藤を捨て札に送りサダカのポイントを二倍にする、これでサダカのポイントは88』
『それがあなたの答えですか』
『私には幸せの一時なんていらない、私から初恋の人を奪ったアイツらの死、それを誘えさえすればそのあとはどうだっていいの』
『ハッ、バカな女だ』
『エピソードカード審判の裁きを発動、その効果により復讐対象を殺す、これでステップ5復讐の亡骸へ到達、私の勝ちよ』
『俺に勝ったのは誉めますが、褒められないことが一つあります、それは御友人を大切にしない考え方に他なりません』
爆弾のスイッチに指が差し掛かる直前、割り込んで!私の弾丸!
自分に祈りながら放った弾丸が下杉の手に命中、弾かれた機械に再度発砲しそれを破壊、結婚式爆破は免れたかに思われた。
遠目に爆発音が聞こえる。
『アレを破壊すればそれで終わりだと思ったのですか?んなわけねえだろこのクソバカが!破壊されても起爆するように出来てんだよ!』
勝ち負け関係なく結婚式を爆破し私を消す、それがコイツの作戦か。
『アンタ自分が巻き込まれるのを承知の上でやっているの?』
『ああ、道連れってヤツさ』
『だったら遺言代わりにアイツらの情報を教えなさい、そういう約束だったはずよ』
『ハッ!吐くわけねえだろボケが!』
『なんだ全然紳士的じゃないじゃないの、それは少し残念ね!』
下杉の足を拳銃で撃ち貫く。
垂れ流される紅い血と共に溢れる下杉の叫びは、私の股を濡らすのに十分だった。
『さっさと情報を吐きなさいよ、そうすればいたぶるのも止めてアゲル』
『誰がテメエ見てえな具体性も無いゴミに喋っかよ!』
響き渡る銃声、これは私が放った物ではない。
下杉が自決したのだ。
皮肉なんて物じゃない。
私はまた結婚式が原因で自殺した人を目撃したのだ。
崩れ行く結婚式会場の中、同行したみんなを探し、合流したが......
『哀抔さん、さっきの爆発音は......』
『ここはすぐに爆破されるわ、早く脱出しましょう』
『それがまだ見つからない人がいるんだ』
愛住君も生徒会メンバーもメイドさんも光威さんも視界に映っている。
今私の目の前にいないのは、まさか!?
『私が探してくるわ、みんなは先に逃げて!』
『キミ一人では無茶だ!』
『私は大丈夫だから!』
まさかとは思うけど新郎さん、あなたまで自殺するつもり......?
部屋を探し回っても見つからない。
疲弊した中、とある場所が脳裏によぎる。
爆発音を背後に大きな扉を開ける。
おおよそこれから爆破されるとは思えないほどに美しく、楽園をも思わせる景色が広がっていた。
そして新郎が一人そびえ立つ。
黒く輝くタキシードを着ていたその人は、結婚式にふさわしい格好をしていたのに、とても不相応のように見えた。
『やっと見つけました、早く逃げましょう』
『もういいんだ、僕はここに残る』
『死ぬおつもりですか?』
『もう疲れたんだ、それに最愛の人はすでにこの世にはいない、だから僕も別の世界に行く、それだけの話さ』
愛した人の後を追う。
私も少しは考えたことだけれど、現に今、現世にいる。
『私には好きな人がいました、その人は結婚式の翌日に死んでしまいましたけど』
私の語りに新郎は顔を見合わせる。
『私はもう、結婚で死に行く人を見たくありません、結婚を人生の墓場だと思いたくは......』
爆発音が大きく聞こえる、このままでは今居る場所にも......
『きっとここにも爆弾が仕掛けられています、ですから早く!』
『最後に聞きたいんだ、キミは何故結婚式に来たんだ?僕とは知り合いでもないし、トラウマでもあるんじゃないか?』
そんなの決まってる。
『悲劇を繰り返さないためです』
さらに大きく響き渡る爆発音。
『そうか、そんなこと言われたら自殺なんて出来ないよな......』
新郎さんの手をそっと握って結婚式にサヨナラを告げる。
爆発。
ひたすらに結婚式が爆発していく。
私達はそれを遠くで眺めていた。
愛住君達と新郎さんと。
テレビもネットも一つのニュースが世間を騒がせている。
結婚式で殺人、そしてその会場の爆破。
私の存在はニュースには出ていないけれど、不安だ。
今の私はとても世間に露出できる在り方をしていないから。
『哀抔さん、ありがとう助けてくれて』
新郎さんを見つけ、一緒に脱出してきたことへのお礼のようね。
『人として当然のことをしたまでよ』
『新郎さんもそのことでお礼がしたいとのことでさ、近い内に開かれるパーティーの招待状をくれたんだ』
人を昂らせるには十分な各質を持っていた、しかも二枚。
『ありがたく頂戴するわ』
新郎さん、これからまた大変でしょうけれど大丈夫よね?
『イベントはそれだけじゃないよ?』
『ちょっとなによ急に距離を詰めてきて』
『明日から僕と共同で依頼をしてもらうから』
事件に巻き込まれても高校は休まないのね......
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




