ようこそ私立恋鎖天命高等学校へ
まばゆい陽射しが朝を彩る。
眠気や気だるさを吹き飛ばしてくれるキモチの良い朝、私は一人の男の子と登校している、リムジンで。
『アンタが金持ちだってのはなんとなくわかっていたけど、まさかリムジンで高校に通うことになるなんてね』
『気に入ってくれた?』
なんだこの御曹子君、案外イタズラっぽい所があるのね。
『気分は良いけど慣れる気はしないわね』
この非日常感は嫌いじゃないけどね......
『それにしても知り合った翌日に転校させるなんて随分話の早いことね』
『君がいた高校にはちゃんと説明してあるから安心していいよ』
私はアンタがなにか表では言えないような手を使ったんじゃないかと疑ってるんだけどね......
『そういえば怪我の方は大丈夫?』
『別に平気よ、でも確か私は腕を狙撃されたし、蹴られもした、なのに問題無く動かせるわ』
『あの後すぐに手術してもらったからね』
『へぇ、でもおあいにくさま、お金なんて出せないわよ』
『別にいいよそのくらい』
『まだ聞いていないことがあったわね、私がこれから通う高校、私立恋鎖天命高等学校ってどんなとこなの?』
『きっと気に入ると思うよ』
後のお楽しみってワケ?まぁいいわ。
他愛の無い雑談をしているうちにリムジンが止まりドアを開けられる。
『ここからは少しだけど歩いてもらうから、ちょっとは通学路も憶えてもらわないと』
『校門まで送ってくれても良かったのに、でもいいわ、身体を動かさないと落ち着かないし』
転校初日から異性と二人きりで登校だなんて、本来なら興奮の一つでもする所なのでしょうけれど、私にはムリだわ、私はもう純粋無垢ではいられないから。
しかしなんだか妙に目立っているような......
『ねぇ愛住君、なにか視線を感じるのだけど』
『ああ何故かわからないけどいつものことさ』
しきりにウワサ話が聞こえてくる。
『今日も素敵ね愛住君......』
『愛住君の登校姿、なんて眼福......』
あらあら愛住君たらモテてるじゃない、なんて笑ってもいられないのかもしれない、周囲の女の子達が私を誰よあのオンナって顔で見てるから。
転校初日の挨拶、ある種ここが肝心だ、ここでクラスメイトにアピール出来るかで今後の学園生活を左右する、と愛住君が言っていたわ、要は釘を刺した訳ね、物理的な意味じゃないわよ。
でもまぁ、私には関係無いわ、なんならハブられるぐらいが丁度良いまである、だから......
担任に呼びつけられ教室に入る。
教室内が盛り上がっているのを感じる、安心なさいすぐに冷ましてあげるから。
『私の名前は哀抔符夜雨、嫌いな物は恋愛とラブコメ、可哀想だからといって私に話しかけなくても結構ですので』
軽くお辞儀をし、担任に指定された席に座る。
なんでこんなことになっちゃったのかしら、なんて考えていると、隣の席には愛住恋が冷たい目で私を見ていた。
『あら同じクラスだったのね、これも貴方の差し金?』
『どういうつもりなの、嫌いな物言って話しかけるなだなんて』
『別に青春がしたいワケじゃないから、私だってヒマじゃないし』
愛住君がやれやれなんて仕草をしている、精々呆れているがいいわ、私のやることの邪魔はさせないんだから。
ホームルームの後、数人のクラスメイトが絡んでくる、私言ったわよね話しかけるなって。
『どこから来たの?』
『その名前本名?』
『お願いですので好きな食べ物とか教えて欲しい』
なんてことはない質問が繰り出されるが、メンドウというほかは無いわ、そうだ愛住君に助けてもらおう。
『ねぇ愛住君、貴方私にこの高校の案内をしてく......』
隣を見ても奴は居なかった、全くどこ行ってんのよあのお馬鹿さんは。
適当に相手をしている内にチャイムが鳴り、周りのクラスメイトが散り散りとなる。
それと入れ替わるように席に戻る愛住君。
『随分遅かったじゃない、なにしてたの?』
『生徒会の皆に説明していたんだ、君のことを』
『何故生徒会の子に私の説明をする必要が?』
『君に生徒会に入ってもらうからさ』
『随分乱暴な話ね、私入りたいだなんて言っていないわ』
『活動しないのは勝手だけど、その時は君のことポロッと言っちゃうかもね』
『意外とサディスティックなのね貴方』
イタズラっぽく笑っちゃって、いつか絶対泣かせてやるわ。
放課後に入り、早速愛住君に生徒会室に連れられる。
『生徒会の活動なんて、私やったことないんだけど......』
『経験があっても教えることにはなるから関係ないさ、ここの生徒会は少し変わってるから』
『なにをやらされるのかしら......』
『それはね......』
生徒会室のトビラを開けながら口にしたその言葉に、私は呆れるほかなかった。
『生徒により良い恋愛をしてもらう活動さ!』
帰らせてもらおうかしら。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




