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紅き滴り毒の花

 好きな色を問われたら、私は(あか)と答える。


人間が好きかと問われたら......


嫌いだと答えるでしょうね。


でも好きなところもあるわよ。


美しく鮮やかな紅い紅い血を持っているから。


だけれど今回ばかりはそんな紅色に対して嫌悪の感情を抱く他はない。


結婚式を控えていると思われる花嫁が惨殺され、紅い血を噴き出していたから。


バラバラに分けられ、血液を撒き散らし。


白のドレスが紅くメイクされていた。


白と紅の組み合わせ(マリアージュ)


美しいとは思わない。


惨たらしい殺人を前に酔いしれる程、私は麗しい穢れ方をしていないから。


悲鳴を上げたと思われる新郎は恐れ倒れていた。


あとから入ってきた愛住(あいずみ)君は膝から崩れ落ちていた。


恋愛を第一に考え、(くだん)の新婚さんを祝福せんと張り切っていたのだから衝撃も受けましょう。


愛住(あいずみ)君一旦この部屋を出ましょう、いつまでもここにいるワケには......』


『あっうんありがとう、一諦さん歩けますか?』


まさか殺人事件が起きるなんて。


まさかまた花嫁を失う新郎の事例を目にするなんて。


私の初恋の人の結婚式に行かなかったこと、今でも後悔してる。


その場に居れば、私にも出来ることがあったかもしれない。


世罪理(せつり)を連れ去った犯人を捕まえることも、あの人を慰めてあげることだって......


でも、居ても同じだったのかもしれない。


その場に居ておきながら、また花嫁を喪わせるのを止められなかったから。




もはや結婚式どころではなかった。


当の花嫁が死んでしまったから。


唐突に訪れた惨状。


私になにが出来ましょうか。


結婚式を妨害され、結婚相手を奪われた初恋の人は最終的に自殺の道を選んだ。


では相手を殺された人はどうなるの?


ただ居合わせただけ。


今日結婚するはずだった二人はどちらとも面識が無い。


赤の他人でしかない。


さっさと帰って忘れてしまえばいい。


絶望の表情を見せる人を。


だけれどそんな選択、取れるワケない。


包帯を捨て去り、骨折していた腕を差し出し新郎の手を握る。


『私が必ず犯人を見つけます、だから今はお気を確かに......』


なんて威勢良く啖呵を切ったけれど、警察の捜査が始まり、私の出る幕なんて無いってのが現実。


逆に私が銃刀法違反で捕まるかもしれない。


挙げ句殺人の罪まで着せられる、なんてのは悲観しすぎかな。


同行メンバーと合流。


情報収集の名目でみんなの様子を伺う。


動揺し、悲しみ恐れを抱いていた。


生徒会のみんな、メイドさんに光威(こうい)さん、それに愛住(あいずみ)君。


みんなにまで危害が加えられることになったら私は......


汚れたはずの私。


そのはずだったのに、それで良かったのに、それを望んでいたのに。


穢れなき感情が私を覆う。


人を護りたいと。


復讐を誓い、それだけを考えてきたのに。


私はいつの間にか精神が少しばかり綺麗になってしまったみたい。




警察の捜査は続き、付け入る隙は見つからず。


今は控え室でおとなしくしているしかなかった。


あまり不審な動きを見せて怪しまれてもいけないし。


でもいつまでもここにはいられない。


焦り行く感情を吹き飛ばす勢いで尋ね人が五人がぞろぞろと。


『なに?あなた達は』


『ふさわしいわ』


『なんですって?』


『ふさわしいと言ったのよ』


『へぇなにに?』


『私達に殺されるのによ!』


五人の腕から伸び出た触手を避けきれず、治りきっていない腕に絡み付く。


『アンタらが花嫁殺しの犯人ってワケ?』


『ええそうよ、幸せの絶頂の最中無惨に殺され、純白のドレスを紅い血で染め上げる、その姿こそこの世で最も美しい!』


やはり来るべきではなかった、なんて思ってしまった、一瞬だけ。


惨たらしい死体を見ることも、止められなかった無力感にさいなまれることも、殺人鬼に襲われることもなかった。


だけれどそうじゃない。


来て良かったんだ。


だって最悪の結末を止める機会を掴めたから。


絡み付く触手を切り落とす、ナイフを使って。


『そんな物騒な物を持っていただなんて、まぁたまにはいいでしょう、精々あがきなさい!』


懐に飛び入りナイフを突き立て、受け止めるは薔薇一輪。


『今よ四番!この隙に!』


『わかりましたわ姉さん』


避けきれないこと察し身を護る動作は無視され、私と交戦していた方へ狂気が貫く。


『血迷ったの四番......』


相手の女の身体に突き刺さる鋭利な花びら。


鮮血を浴び輝きを増す。


引き抜かれて私以外の三人をも引き裂き行く。


四番と呼ばれた女は狂ったように笑い乱れる。


『花嫁は一人で良い、そうは思わない?』


『それは一人につきって意味?それともこの世にって意味?』


『両方よ!』


一輪の花が狂い咲く。


美しく残酷に。


汚らわしく淫らに。


吹き散らす血液は絶頂の末に撒き散らすジュースのよう。


死してなお美しく。


死こそ最大の美と言わんばかりに。


花嫁と成り行く女に死に至らせるは五人の花嫁候補。


急成長するツタが先を尖らせ、私を標的とし、私の片手に突き刺さる。


手から血を滲ませる私を見て四番は恍惚で身を震わせる。


『この世に花嫁は一人で十分なのよ』


『だから殺したの?新婦もアンタのお仲間も』


『さすればこそわたしは美の頂点へ立つ!』


『アンタ程醜い女はそうはいないでしょうね』


余裕綽々な雰囲気は一瞬で崩れ去り。


『誰が醜いですって!?具体的に言えゴミが!!』


四番の本性が露となる。


ラフレシアの如き、醜い中身が。

この物語はフィクションです。

犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。

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