強敵と書くのかしら
光威さんがうずくまる、見知らぬ男に殴られて。
私が援交なんてやってたから巻き込んでしまった。
なにも関係の無い人を。
『いきなりなにすんのよ!』
『質問は後で聞きますんで』
光威さんが自動車へと運び込まれる。
私にとってあの娘は正直言って邪魔でしかない。
このまま見捨てて逃げてしまえばいい。
だけれど何故でしょう、身体が勝手に止めに行っていた。
『待ちなさい、連れてくのは私だけにしなさい』
『そういうワケにもいきません、数として二人必要なんですから』
『だったら私が二人分働くわ』
『言ったはずです、数として二人必要だと』
どうあっても連れていくつもりなのね......
『せめて私と光威さんは一緒に行動させて頂戴』
ここはおとなしくついて行き、隙を見て二人で逃げましょう。
しかし監視の次は強制連行とはね。
後で愛住君か大神君をからかい倒しましょう、ストレス発散しないとやってらんないわ。
車内の揺れを感じる。
おおよそ友達とは呼べない同級生と共に。
どこに向かっているのか、なにをさせられるのか。
一切聞かされておらず、心に不安感が侵食する。
それは光威さんも同じのようだ。
私に身体を寄せて離さない。
光威さんの震えた手をそっと触れる。
『安心しなさい、こんなところすぐに脱出してやるんだから』
『なんですかそれ、慰めのつもりですか』
素直じゃないわね......
『それに腕の折れてるあなたに言われてもちっとも頼もしくありませんから』
骨折してるの忘れてたわ。
『だっ大丈夫よ、なんとかなるわよ!』
『忘れてたんですね、骨折のこと』
『うるさいわね!』
『つきましたよ』
女子高生二人の戯れは儚くも差し止められた。
男達に誘導されてついた場所はビル三階に構えられた事務所のようだ。
階段を歩く足音はイヤに緊張感を増幅させる。
『ではこの部屋でお待ちください』
殺風景な個室へと追いやられてしまった。
『わたし達これからどうなるのでしょう』
『あまり弱気にならないで、どうにもされる気はないと、そう思いなさい』
『よっ弱気になんてなってません、それよりあの人達は哀抔さんのことを知っていたようですが......』
白状するしかないようね、巻き込んでもしまったのだから。
『あのウワサの通りよ、私は援交に手を染めている、とても清廉潔白とは言えない薄汚れた女よ』
『私が援交なんてしていなければあなたにまで危害が及ぶこともなかったでしょう、私のことは好きにしてくれていいわ』
『意外と湿っぽいのですね、もっと気丈なお方だとばかり思っていました』
そう発した光威さんは妙に落ち着いて見えた。
『先ほどの頼もしい態度は一体なんだったのでしょうか、見損ないました』
『見損なったってあなた......』
『哀抔さん、これでもわたしはあなたを一目置いていたのです、転校直後に生徒会副会長に選ばれ、様々なウワサを囁かれていても堂々とした姿勢を崩さない、そんなあなたが』
『それがなんですか今のあなたは、まったく情けない』
言わせておけば好き放題言ってくれちゃって......
『情けないですって?バカにしないで頂戴、それにすぐダウンしてたアンタに言われたかないわよ』
『フッハハハ!』
とうとうぶちギレたのかしら。
『それでこそ哀抔さんです、さぁ早いとこ脱出しましょう!』
『調子良いんだから』
まさか光威さんに発破をかけられるとはね、私も焼きが回ったかしら。
『お二人さん、そろそろ来てください』
呼ばれて来た先に映る光景として、女子高生が四人。
『集まったみたいですね、それでは始めましょう!』
辺り一面が暗がりとなり、視界不良に陥る。
私達以外の女性の怯える声が聞こえる中、私の身体を伝う感触がする。
『なにこの感覚......』
だけれどすぐにその感覚から解放される。
足音が雑多に聴こえる。
どうも下の階が騒がしい。
私の身体から感触が消え、明かりが灯る。
周りには呼ばれた側の人しかいない、この隙に逃げましょう。
『光威さん、今の内に行きましょう!』
出口に繋がる階段にたどり着き、異様な光景を目にする。
私達を連れてきた男達が無造作に倒れていたのだ。
なにが起こっているのか、今はそれを考えている場合ではないわ。
光威さんと出口に向かって走り、いよいよ脱出、だったのだけど。
私達の前に傷だらけの男が姿を現す。
『せっかく集めたんだ、逃すわけには......』
一体なにが彼らをそうさせるのかしら。
『光威さん先に行ってて』
『......あなたの無事を信じましょう』
光威さんを見送りつつ、相手の男に身体を向ける。
私に対してもたれかかるように身体をぶつけ行く、このまま絞め落とすつもりのようね、でもそうはいかないわ。
『この感触わかる?』
『この感覚はまさか!?』
傷だらけの状態でナイフなんて突きつけられれば、それはそれはおっかないでしょう。
『今度から頼むのは私だけにしなさい、それならあなた達の仕事も受けるわ』
私の要求を受け入れたまま倒れ込む男を尻目に脱出。
無事逃げ出すことに成功し、光威さんと合流する。
『しかしなにがあったのでしょうね、階段に人が倒れているだなんて』
『......』
『どうしました?』
『私のせいであなたを巻き込んでしまったのだから、なにもされないワケにも......』
『また明日、学校でお会いしましょう』
『突き出したりしないの?』
『わたしを助けてくれましたから、退学になんて追い詰めませんよ』
翌日の朝、いつものように愛住君と一緒に行動を共にする。
愛住君とご一緒するのが私にとって当たり前となって軽く辟易としていたその時、光威さんが現れ、私に一言。
『絶対負けませんから』
なんの勝負よ、でも少しは私のこと認めてくれたのかしら。
『もしやケンカ?』
『そんなんじゃないから心配しないで頂戴』
だけれど一つ問題が残っている。
階段に倒れていた人達は誰にやられたのか。
考えごとの尽きない私の前に、生徒会への依頼人とおぼしき人物が立ちふさがる。
『魔力って当たり前に生命エネルギーとして認識されてるじゃないですか?』
急になんなのかしら?
『これって魔力イコール精力つか性欲ってのが自然じゃね?そうなんじゃね?ウヒョッ』
無視しましょう、無視。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




