光も闇も
人気者と生活を共にするのも良いことばかりじゃないわ。
一部の人に嫌われるのはもちろん、因縁とか付けられたりしてもう大変。
そんなメンドウな存在の一人が消えかかっている。
そういえば私の退学もかかっていたわね。
私が彼女を助けてもなんにもならない、むしろ邪魔者が消えるだけ。
だけれど、気づけば手を伸ばしていた。
それは愛住も同様だった。
私達二人の手が光威さんの手を掴み、転落を阻止して見せた。
『おっとと、危なかったね』
『あっありがとうございます愛住さん!』
『私にはなにもないワケ?』
『フン!誰があなたなんかに!』
『なんですって!?』
『ほらほらケンカしないで二人とも』
『あっそうだ、やむを得ずとはいえ悪いね手握ったりして、イヤじゃなかった?』
『とんでもないです!』
『そっか、それじゃそろそろ行くよ、足下気をつけてね』
『はい!どうもありがとうございました!』
嬉しそうに自分の手の匂いを嗅ぐ光威さんを尻目にその場を後にする、愛住君と一緒に。
『なにデレデレしちゃってんのよあなたって人は』
『嫉妬したの?』
イタズラな微笑みを見せる愛住君はどこか楽しそう。
『そんなんじゃないわ、ただ腹が立っただけよ』
『素直じゃないな、フフッ』
『ほざいてなさい』
その後も光威さんによる監視が続く。
見られていることに気づいているのか、いまいち掴めない愛住君の行動もといアプローチには思わずヒヤヒヤさせられる。
しかしそれは私に確かな癒しを与えていた。
朝起きて男の子と学校行って、食事を共にし、勉学や生徒会の事務に励む。
いつか私が夢見たかもしれない青春。
私はそんな道を歩んでいる。
端から見たら幸せそうに映るのかもしれない。
あるいは十年後にこの頃を思い出して懐かしんでいるのかもしれない。
でももう浸れない。
想いを馳せられない。
私の幻想の源泉はもう朽ち果ててしまったから。
放課後の帰り道に私一人きり、のはずだったのだけど。
『放課後まで見張ることもないのではなくて?光威さん?』
はからずも光威さんと一緒に帰宅する形となる。
『学校の外でこそその人の在り方が垣間見えるのよ』
『ああそう、それはご苦労なことで』
『フフン、もっとわたしを誉め称えなさい!』
皮肉が通じていないわ......
『何故わざわざ放課後まで私を視るのよ、そこまでする理由を聞かせて頂戴』
『だってあなた愛住さんに好かれているんですもの』
『好かれているですって?冗談かしら?』
『冗談というには距離が近すぎますでしょ』
『単に私をからかって遊んでいるだけよ、私に好意なんて抱いていないわよきっと』
『哀抔さんでも乙女のような表情を見せるのですね』
『なに言ってるの!?私がそんな表情するワケ......』
『それだけではありませんのよ、あなたウワサされてるでしょ、それもあまりよろしくない類いの』
『それを探りに来たってワケ?』
『それだけじゃないのです、だって面白いんですもの』
『なにそれ、暇潰しってこと?』
『男子から人気のあるあなたが、女子人気のある生徒会長たる愛住さんと近い距離にいる』
『そんなお人についているウワサ、興味を持たないワケもないでしょう?』
やれやれとでも言えば良いのかしら。
『ウワサ好きも大概にしときなさい、そんな遊び感覚で首を突っ込んでると命がいくつあっても足りないわよ』
『意味深なことおっしゃるんですね、ますます興味が惹かれます』
付ける薬無しってヤツね。
でもどうしましょう。
人に見られている中で復讐相手を探すワケにもいかないし、それに私と一緒だとトラブルに巻き込んでしまう恐れがあるわ。
とにかく光威さんから疑念を取り除かなくては......
『ねぇ光威さん、私と愛住君が二人で居るのがそんなに気に入らない?』
『当然でしょ?』
『なら安心して頂戴、少しの間だけお部屋を借りているだけなんだから』
『同棲ではないと?』
『ええ、それにあの愛住君が援交なんてしている人に構うワケないって、そう思わない?』
愛住君ラブな光威さんにならこの手も効くはず。
『本人の言うことだけで判断をするほどわたしは愚かじゃない、今度愛住さんに聞いて見ますから』
思いの外強固だった、侮っていたわ......
『とりあえず今は哀抔さん、あなたを視させてもらいます』
『......好きになさい』
彼女を納得させるのには正攻法しかないってことかしら。
『というかあなたどこまでついてくるつもりよ』
『家までですよ?』
さも当然のように言わないで頂戴。
『それは勘弁して頂戴な』
『なにかやましいことでも?』
『常識で考えなさいよ、さして交流のないクラスメイトの家について行こうだなんて、マトモな神経をしているとは思えないわ』
『なにを言われようと監視は続けますから』
厄介なんてモンじゃないわこの娘......
どうしてやろうかと考えを回していれば、私を尋ねる男が一人現れる。
『あなた哀抔さんですよね?』
なんて答えれば良いのかしら......
恐らくこの人は私のお客さん、援交のことがバレたら私は......
『アレ?横のお嬢さんはもしや?』
お客さんの興味は光威さんに向けられる。
『哀抔さん、このおじさん誰ですか?』
私も知らないわよ。
『それでなにか御用でしょうか』
『そうだ!急遽二人程来られなくなったんですよ、代わりとしてあなた方にどうか!』
代わりってなんのよ。
『ああ申し訳ありません、こちらも時間に余裕は無いのです、少々手荒にイキますよ!』
近くの自動車から数人の男が現れ、光威さんが殴られ倒れ込む。
本当に巻き込んでしまったわ......
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




