怪我の功名って奴?
昨日受けた痛みはまだ残っている。
その上片腕の骨折までも。
復讐相手に合間見えておいて、成し遂げられぬまま、逆に深い傷を負わされる。
またしても私は世罪理に深い傷を刻み込まれた。
今日だけでも高校を休んで、療養でもしていようかとも思ったけれど、身体を動かしていないとどうにかなってしまいそうで、結局来てしまった。
その結果がコレ。
『ねぇ哀抔さん答えて、愛住さんとはどういう関係なの?』
女の子達によって囲まれ、問い詰められている。
休んでりゃ良かったかしら。
『単なる生徒会仲間よ』
『哀抔さん、あなた愛住さんと同棲してるんですってね、単なるなんてレベルじゃないでしょこんなの』
すでに周知されているのね、私達の同棲。
『一時的な物だから、別に交際なんてしていないわよ』
『へぇそう?』
懐疑的な目が私を見つめる。
どうも私の言うことを信じていないようね。
『ところでその腕どうしたの?』
なんて言えば良いのかしらね......
『ケンカでもしたの?』
『違うわよ!そんなんじゃ......』
似たようなモノ、なんて言えないわね。
『副業でのトラブルとかじゃないの?』
まさかこの娘、私のヒミツを!?
『ウワサされてるのよ、哀抔さんが援交をしているんじゃないかって』
周りの女の子達が私を卑下する、ウワサとして出ただけの段階だというのに。
『そんなことやっていないわ』
最近は、というのも言わないでおきましょう。
『なんにせよそんなウワサが流れているあなたに、愛住さんの近くにいる資格があるとは思えないの』
『私から近づいたワケではないというのに酷い言い草ね』
『あなたが愛住さんと近しくなければ、こんなことも言わなかったでしょうね』
まったく、同居人が人気者というのも考え物ね。
『同棲をやめれば満足するのかしら』
『確かにやめては欲しいんだけど、その前にあなたを観察させてもらうわ』
『もしあなたが愛住さんと釣り合わない人だったり、ウワサが本当だと判断できたら、わたしがあなたを退学に追い込んでやるわ』
なかなか言ってくれるじゃない。
『面白いじゃない、受けて立ってやるわ』
『でも私だけがリスクを負うのも癪だわ、あなたが負けを認めた際にはなにをしてくれるのかしら?』
『へっ!?わたしもなんかやるの!?』
そういうの特に考えてなかったのねこの娘......
『あっあなた自分の立場をわかってゆってんの!?』
『あら、このまま退学に追い込んでくれても良いのよ、その場合私も反撃くらいはさせてもらうけれど』
されたままで終わるつもりはないから。
『とっとにかくしばらくの間、あなたを監視してやるんだから!覚悟してよね!』
慌てたように去って行き、周りの女の子達も散り散りとなったが、またすぐに一人の女子が戻り行く。
『言い忘れていたわ!わたしの名前は光威耶魅!せいぜい震えてなさい!』
今度こそ去って行った。
理知的な見た目をしていたけれど、中身はそうではないようね、ちょっと可愛かったわね。
『哀抔さん、お昼行こっか』
『あのね愛住君、今は二人で行動するべきではないと思うのだけど』
『キミがケガをしている今こそ一緒にいるべきだよ』
気を遣ってくれてるのはありがたいのだけれど、見られてるのよね、光威さんに。
『これくらいなんともないわよ』
『普段よりフラついてるのに?』
『あら随分イジワルですこと、怪我人相手でも容赦ないのね』
『強がっちゃって、でも無理しなくても良いのに』
『はぁ?無理?強がり?全然してないわよ!』
『無理なんてしてないんだから......』
ツラくないワケないじゃない。
やられっぱなしだったんだから。
感傷に浸る私を尻目に、顔を赤らめる男が一人。
『ねぇそれわざとやってる?』
『なによわざとって』
私の手を握る愛住君はまるで私を救いにでも来た王子様みたいに。
『ちょっと私怪我人なんだから!あまり引っ張らないで頂戴!』
またも屋上まで連れて来られ、食事を共にする。
これで監視でもされていなければ少しは楽しいのでしょうけれど。
『ほら哀抔さん、口を開けて』
ミニトマトを掴んだハシが私の顔に向けられる。
『はいあーん』
見られている中でこれをやるなんて恥ずかしいにも程があるわよ。
生徒会長と副会長のお戯れには、光威さんの嫉妬の怨嗟が迸る。
『やっぱり自分で食べるわ』
震えた手が操るハシでは、満足に掴むことも出来ない。
『無理しないで僕に任せて、はい』
『あなたまだ自分全然食べていないじゃない、授業に遅れちゃうわよ』
『キミと二人きりの時間が増えるなら構わないよ』
屋上のドアにヒビでも入るような音が聞こえたような......
『よくもまぁそんな恥ずかしいセリフが出てくるモノね、呆れてモノも言えないわ』
『結構喋ってるのに』
『お黙んなさい』
その後も愛住君と行動を共にする。
移動の際には身体を支えてくれたし、階段を下りる時には手を繋いでいてくれた。
傷ついた私の心と身体には、それがなによりも沁みた。
『ここまでしてくれることもないと思うのだけど』
『迷惑だった?』
『そっそうは言ってないわよ!だからその、アリガト......』
私の照れながら出したお礼の言葉に、一人の女の子の中でなにかが切れた。
『だー!なによこの空気は!二人とも早く離れなさーい!』
『ちょっと引っ張らないで頂戴!』
怪我人にも容赦無しの光威さん。
これは後でお灸を据えないといけないわね。
しかしその必要もなかった。
光威さんが階段から滑り落ちたから。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




