幕間劇 Eve・A・Eve
街中が浮わついている。
幸せそうな二人組と人工的光りを満ち足りたような雰囲気が辺りを包んでいる。
『まったくイヤになるわ』
『クリスマスイブは嫌い?』
『当然よ、私は哀抔符夜雨なのよ』
恋愛という極普遍的な物を嫌う私が好きになれる時間じゃないのよ。
『ところで愛住君、この飾り付けはなに?』
『僕達もクリスマスを楽しもうと思ってね』
浮わついているのは愛住君も例外ではなかったようね。
まぁこんな恋愛脳がクリスマスを嫌うワケもないか。
ただ、メイドさんまでテンションが高いような......
『恋様が同年代女子とクリスマスイブを過ごすのです、ここでやらねばどこでやる、ということです』
『僕が一生の思い出にしてあげるよ』
実家に帰らせてもらおうかしら。
『それではプレゼント交換の時間です!』
かったるいわ、さっさと渡して次行きましょう。
『二人とも用意はしたかな!?』
『当然です恋様』
『一応持っては来たわよ......』
『それではシャッフルだ!さぁ回して回して!』
三人でプレゼントを渡らせる。
この人数で回すのなんか寂しいわね。
『はいそこまで!今持ってる物を開けてね!』
『では不肖わたくしめから』
メイドさんが手に持つのはブレスレット。
赤を基調とした艶やかな一品。
『気に入ってくれた?メイドさん』
『もちろんですとも、恋様』
ふぅん、良いセンスしてんじゃない......
ってなに愛住君の物を欲しがってるのよ、私ったら!
調子が狂う前にさっさと開けてしまいましょう。
『私が開ける番ね』
手触りの良い小箱から取り出されたのは......
『メリケンサックね、これ......』
『わたくしの選んだプレゼントはいかがでしょうか』
『ええ、大切に使わせてもらうわ』
『ちょっとメイドさん、なにを渡しているの!』
『自衛の為にはあれくらいは持っておくべきです、普段から言っているはずですよ』
『だからってクリスマスイブに渡さなくても......』
『ブー垂れていないで早く開けなさいよ』
『急かさないでも開けるよ』
目を輝かせながら開封する愛住君だったけれど、すぐさまにくすんでいった。
『あの哀抔さん、これは......』
真っ二つに割れたハートのアクセサリーを前に軽く引いているようね。
『あのさ哀抔さん......』
『早とちりしないで頂戴、ほら片割れを手に持ちなさい』
『なにをする気?』
愛住君の持つ片割れに私も同じ物を寄せて、一つのハートへと変わる。
『はい、ハートの出来上がり、これはこういう設計なの、壊したワケじゃないわよ』
『......案外ロマンチックなんだね、哀抔さん』
『ロマンチック?なにを言って......』
私ったらなに愛住君とハートなんて持ってんのよ!
『哀抔さん、顔赤くなってるよ』
『あっ貴方こそいつもより赤いんじゃないの!?』
『これは写真に収めねば!はい、さんにーいち......』
ちょっとメイドさんたら写真なんて......
こんな状況、写真に遺しても恥ずかしくなるだけでしょうに、何故でしょう。
私の手がハートを離さない。
シャッター音と共に元気に溢れた声が響く。
『ちわーっス!来ちゃいましたっス!』
直に見られてしまった、生徒会の三人に。
『やはり連絡はするべきだったな』
『素敵です二人とも......』
『お邪魔しました、これにて失礼!』
そそくさと帰り行く三人は愛住君に待ったをかける。
『ちょっと待って!?今日は来ないんじゃなかった!?』
『ええ、しかし上谷がやっぱり行きたいとゴネまして』
『だって寂しくなったんですもん!』
『それじゃみんなで遊ぼっか』
やれやれと言わんばかりの仕草をしながら、三人を迎え、生徒会メンバーとメイドさんの六人で夜遅くまで遊び呆けた。
クリスマスイブの0時前、私は愛住君の部屋で二人で横になっていた。
『哀抔さん、これは一体......』
『あら?クリスマスの時期に一人で寝るのはさぞかし寂しいかと思って来てあげたんだけれど、お邪魔だったかしら』
『イヤ嬉しいよ』
『そういえばさ、貴方のプレゼントのブレスレットだけど、私が好きって言った赤色だったわね』
『もしかして私に当たることとか意識してた?』
なーんて吹っ掛けても見たり。
『気づいてたか』
『じょうだ......へ!?』
予想していない答えが返ってきてしまった。
『キミこそハートのアクセサリーなんて誰に渡すつもりだったの?』
『貴方に決まってんでしょ......』
『へぇそうなんだ』
『恋愛感情なんて簡単に壊れるってことをわからせるためにね』
『僕とハートを完成させてなに言ってんの』
『うぇぁ!?』
『乙女感爆発してるね哀抔さん』
屈辱だわ、私が恋に現を抜かしているみたいになっちゃって。
『やっぱり可愛い』
甘い言葉をかけながら私に抱きついてくる。
『なんだか愛住君の身体も熱いような......』
ドキドキしてたの、私だけじゃなかったんだ。
クリスマスを告げるベルが鳴る。
『ねぇ愛住君』
『なぁに?』
『メリークリスマス』
私を抱き締める腕がさらに強く、私の身体に食い込む。
これでお相子かな?
起きた時には生徒会メンバーとメイドさんに、一緒に寝ているのを見られ、大騒ぎになったのだった。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




