出戻りラムネ瓶
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。
再び私は海崎君の自宅を訪問していた。
まだ二回目なのに、何故だかもっと多く来ていた感覚に陥っている、不思議ね。
『すいません、助けて戴いたというのに結局......』
『謝ることないのよ、登校するかどうかは貴方が決めることなんだから』
『その、万歳座凶はどうなりました?』
『退学したわ』
『でも取り巻きと柊さんは失踪してしまったみたいで、今もどうしているか......』
『そうですか......』
しばしの沈黙の後に、海崎君が声を震わせながら。
『情けないですよね、ぼくにとっての脅威は消え去ったのに引きこもったままだなんて......』
『誰だって立ち直るのに時間は要るわ、それに立ち直っていない状態のまま引っ張り出すワケにはいかないもの』
『私は貴方の意思を尊重するわ』
『なんてお礼を言ったら良いか......』
懺悔でもするかのように、海崎君が口を開く。
『ぼく、誤解していたのかもしれません、陽キャとかリア充とか、あと生徒会の人もみんなキラキラした生活を送っていて悩みだとかは一切無いのだろうと』
『でもそうでない人もいる、こんな当たり前のことをなんでわからなかったのか、それを謝罪させてください』
『謝罪なんてそんな、私は明るいワケでも充実してるワケでもないから......』
『それでも申し訳なくて仕方ないんです、レッテルを貼っていたことが』
『どんな人でも貼っていないとは言いきれないはずよ、だから気にしすぎないで頂戴』
『ではそろそろお暇するわね』
『あっあの哀抔さん!』
『あら?どうしたの?』
まさか海崎君に引き止められるなんてね。
『いつかは復帰しなきゃって思ってて、でも外に出るのが怖くもあって、ぼくはどうしたら......』
『そうね、引きこもっていたことを後悔する声も少なくはないでしょう』
『逆に引きこもっていれば助かったかもしれない命も』
『どちらの方が正しいのかなんて私には言えないわ』
簡単に結論付けるのは一線を越える気がしてならないの。
『こうしている間にも時間は過ぎていくわ、高校生という貴重な時間は』
『だからと言って強引に外に出すのは肯定されるべきではないと思うの、そんな簡単に、簡潔に進められることじゃないだろうから』
『少しずつ時間をかけて、細心の注意を払うべきだと、だから貴方もどうか焦らないでね』
『あの、哀抔さん、今度どんな高校生活を送っているか聞かせてくれませんか?』
『ええ、もちろんよ』
今回の依頼は依頼人の失踪という形でうやむやになってしまった、それに不登校を解決も出来ていない。
なのに何故だか、気分は晴れやか。
一緒に訪問者していた愛住君と軽い会話を一つ。
『どうだった?海崎君の様子は』
『元気とまでは言えないかもしれないけれど、不元気でも無いと思うわよ』
『そっか、改めて言うよ、良くぞ成し遂げてくれた』
『止して頂戴、私はそんな大層なことはしてないわ』
『万歳座凶の存在は人の命を失わせる危険性があった、キミはそんな存在から海崎君を護ったんだ』
『護っただなんてそんな、それに万歳を化け物みたいに言うのは......』
『もしかして同情してる?』
『同情はしないわ、ただなんていうか、気に入らないからってその人を悪役以上には見ていないような人も目立って見えるから......』
『やっぱりキミは優しいね』
『おだてても出るのはクサシ文句だけよ』
『すぐ照れるくせに』
『あら、言ってくれるじゃない、どっちが上かわからせてアゲルわ』
愛住君の微笑みは随分と楽しそうで、また意味深にも思えた。
『やっぱりキミはそうしているのがいいよ』
『今度はなによ......』
『僕はキミに恋愛をしてほしい、どんな人でも良いってワケじゃないけど』
この恋愛脳め。
『なにか勘違いしていないかしら、私は貴方を組み伏せようとしているのよ』
『そうやって僕より上であろうとしてるいるのが嬉しいんだ』
これでも真剣なつもりなのだけれどね......
張り合っている私とは違い、余裕綽々な愛住君の態度に、私の顔に怒りのシワがよる。
『どうやら貴方は私を舐めているみたいだけれど、そんな態度とっていたら......』
『とっていたら?』
丁度良いことだし、からかってやるわ。
『私のおっぱい舐めさせるわよ』
呆れたような顔をした愛住に手を握られ......
『そんなこと、簡単に言わないで』
諭されてしまったわ。
今思えば読めていたことなのに、私ったらなにを......
『もうやらないから手を離して』
『あっゴメン』
離された手の温もりと共に気まずい空気が流れ込み......
『キミのすぐ性の話を持ち出すクセ、治した方が良いと思うんだ』
『男子高校生にそれを言われるとはね』
『でもウブな所もあるよね、ちょっとアクションを起こすとすぐ顔を赤くしたり......』
『赤くなんてしてないわよ!?』
『ほらまた赤くなってる、可愛い』
身体全体が熱い気がするけれど、気のせいよ。
『なんだか随分とご機嫌じゃない、どうしたのよ』
『哀抔さんが機嫌良さそうだからさ』
そんな風に見えてたんだ......
『あっでも依頼はあまりうまくはやれていないみたいだから今後はもっと頑張ってもらおうかな』
『もう辞めてやろうかしらこの高校』
『逃してあげないから』
『はーヤダヤダ』
『そういえばそろそろ学力テストだけど、勉強の方は大丈夫?』
『楽勝よ、勉強出来なくても人生なんて』
『ちょっとぉ!?聞き捨てならんよ哀抔さん!?』
ここまで閲覧していただきありがとうございました。
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またクリスマスイブの夜頃には更新を予定しています。




