HOLE IN ONE
ラムネ瓶が散乱する。
何故いちいちラムネ瓶が出てくるのよ。
『俺はむかしっからラムネが好きでよー、よく飲んでたっけな』
『なによ急に』
『でもそんなラムネにも気に入らないモンがあった、それはラムネ瓶に入ってるビー玉だ』
『輝いて見えたそれを取り出したくて仕方なかったが、出せなかった、だから嫌いだ』
『いつまでも殻んなかに閉じ籠りやがって、まるでラムネ瓶のビー玉みてぇだ、だから海崎が気に入らねぇ』
『そんな理由で暴行したと言うの!?』
『だったらどうしたぁ!』
万歳によるラムネ瓶での攻撃に、私は避けきることが出来ず、とっさに腕で防御する。
『ほらほらどうした?おまえもラムネ瓶を持てよ、まぁそれ以外を武器にしても良いけどな!』
万歳の攻撃が続く。
私はそれをやり過ごすので精一杯だ。
ナイフも拳銃も持ってきている、だけれどまだ迷っている、ここで使っていいのかと。
『隙ありッ!!』
私の腹部に鈍い感覚が走る。
お腹に蹴りを入れられ、怯んだ隙に頭をラムネ瓶で殴られる。
尋常ではない痛みと血の抜ける感覚によって、立てるだけの力を失う。
『トドメと行きたいが、まだまだこんなもんじゃねー、朝湖!健太を起こせ!』
なによ、まだ海崎君に手を出すつもり?
下ろされた海崎君に柊さんが叩き起こす。
ニタニタと笑う万歳とそれの側にいる柊さん、果てに横たわる私を見て驚愕し、涙を浮かばせる。
『なんでこんなこと!?』
『オメーが悪りぃんだよ!海崎ィ!』
『オメーがいっからそこで横たわってる女が傷つくんだよ!全部オメーのせいだ!』
泣き叫ぶ海崎君に万歳の容赦ない口撃は続く。
『おら朝湖口貸せ』
万歳によるキスの見せつけに海崎君の涙は止まらない。
『おまえが昔好きだった女を取られる気分はどうだー?』
『俺様はこの世の全てを手に入れられる!貴様ら凡人のクソ陰キャとは違ってなー!』
『ギャハハハハハハハハ!!!この俺様こそが神なのだ!!俺を崇めろ!』
『違うわ......』
『あん?』
ふつふつと私の身体に力がみなぎる。
『私が今傷ついているのは海崎君のせいなんかじゃない、私の意思よ』
『ついで言ってやるわ万歳、アンタを崇める理由なんかこれっぽっちもないのよこの糞ヤリチン野郎!!』
『なんと言ったか苦粗温苗が!!』
万歳が振りかざすラムネ瓶を受け止める。
私を蝕む痛み、それは私に対するラムネ瓶での攻撃よりも、海崎君に対する口撃による物。
海崎君が受けた精神的苦痛が私にも伝わってくる。
わかったようなことを言うのも本人にとっては失礼だけれど、少しは彼の痛みを理解できるつもりだ。
その痛みに比べれば身体的苦痛なんか......!
鮮烈なる赤色が飛び散る、それは万歳の身体から吹き出たのだ、鮮やかにして醜悪な血液が。
ナイフで腕を切り裂き、流血させる。
それに比例しての叫び、単に痛いから、血が出ているからだけではなく、自分が他者に傷をつけられたことに怒ってのことだろう。
この俺様が凡人なんぞに、と。
だけれどその思い上がりもここまでよ。
『まだだ!このままでは帰さねー!』
万歳が柊さんの首を締める。
『この女がどうなっても良いのか!』
『どこまでもアンタは!』
『さっさとナイフを捨てろ!さもないとこの肉奴隷を殺す!』
外道の脅しに動けないでいれば、引き起こることは......
海崎君が万歳に激突した、体当たりを仕掛けたのだ。
不意のことで戸惑う万歳だったが、すかさず応戦し、激昂する。
『テメェこの引きこもりのブタ風情が!チョーシのんな!』
海崎君が万歳をホールドしている、執拗に殴られても。
『今だ哀抔さん!この隙にアイツを!』
『でも私の手元が狂ったら貴方は!』
『ぼくのことはいいから!』
覚悟を受け止め、万歳にナイフを向けるが、すぐさま引き剥がされる。
『俺にさわんじゃねーよ!クソブタが!!』
海崎君を横たわらせてなお暴行を加える万歳に私は愚直にも突撃し蹴り倒される。
『おい海崎ィ!おまえは俺に勝てない、すべてにおいてな!ギャハハハハハハハハ!!!』
暴虐の限りを尽くすクソヤロウに私の怒りが臨界点へと突入する。
拳銃を手に取り、ラムネ瓶を拾う。
『はっ!またモデルガンかよ!遊びのつもりか!?舐めるな!!』
『遊びはアンタでしょ』
ラムネ瓶を投げ、飲み口に向かって、撃つ!
中のビー玉に命中、押し上げられてそのまま万歳の目に激突し、動かなくなる。
『他愛もないわ、ビー玉を取り出すなんて』
万歳君の目玉はラムネ瓶のビー玉、片方だけね。
なんとか勝てたけれど、まだやることがある。
『ひどい......』
『ええまったくね、でも安心なさい、私が倒したから』
『そうじゃないです!なんてことするんですか!?万歳君は良い人なのに!』
柊さんの頬を叩く。
『いい加減に目を覚ましなさい、万歳は貴女までも手にかけた上に肉奴隷呼ばわりしたのよ。』
『自分を殺そうとした人を持ち上げるのはやめて頂戴』
涙を流す柊さんを尻目に、ぐったりとする海崎君を背負って退散する。
勝負に負けた万歳は退学となったが、ハデにケンカしたのもあって私も停学となり、そして......
復帰明けの放課後、私は再び海崎君の部屋のまえに立っている。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




