ビー玉に手を伸ばす
私が所属する生徒会に不登校生徒の復学の依頼が舞い込んだ。
すでに外は暗くなっていたので一旦は話を明日に持ち込んだのだけれど。
『ねぇ愛住君、受けるの?あの依頼』
『とりあえず話を聞いてみよう、生徒会のみんなの意見もね』
『恋愛以外の相談も聞くのね』
『悩んでいる生徒を放ってはおけないから』
こんなにお優しい子がなんで私を受け入れたんだか......
『自己紹介がまだでしたね、アタシは柊朝湖です』
『では改めて言います、不登校生徒の復学をお願いしたいんです』
日は変わり、生徒会全員が集められた中で再度依頼が申し込まれる、ラムネ瓶を持ちながら。
『何故生徒さんのご両親ではなく貴女が?』
愛住君によるごもっともな質問、この前の奇行で風邪引きそう。
『アタシが悪いんです、アタシが振っちゃったから』
なんだ恋愛絡みだったのね、というか自分で解決して欲しいわ。
『それと、何故生徒会に相談を?』
『だって先生に言ったらバレるじゃないですか!アタシのせいだって!それはイヤなんです!』
『愛住君、断りましょう』
『まぁまぁ、復学自体はその生徒さんの為を想ってのことだろうし』
『いえ復讐されんじゃねぇかって気が気でないだけです』
ラムネを飲みながらこのセリフときた。
言葉に詰まる生徒会一同。
『それでどーすんのよ、アレの依頼を受けるワケ?』
『聞いた以上はほっとけないよ』
なんだかイケない大人に引っ掛かりそうで心配になってきたわ。
『でも登校するかどうかなんて個人の自由じゃない、好きにさせればいいわ』
『本当に好きで登校していないのなら、出来ることは無いのかもしれないけど、とにかくその部分も聞きたいんだ』
結局私以外は依頼を受けるのに賛成しちゃうし。
『それでは作戦会議を始めます』
『まずは件の生徒のことを知らなきゃ、ひとまずは訪問して話してみよう』
『ハイハイ!生徒会メンバー全員で家に行くってのはどっスか?』
まぁそういうこと言うだろうなと思っていたわよ上谷君。
『絶対にやってはダメよ』
『ああ、一人で行くべきだと思うよ』
『この高校の良さを、あるいは学園生活がいかにかけがえのない物かを説明するのはどうでしょう』
『それはすぐにやるのは怖いわね、相手の神経を逆撫でするかもしれないし』
『ならば行かなかったことで後悔した、というような話をするのは?』
『変に相手を不安がらせることも無いわ』
『それで、誰が訪問するかだけど......』
上谷君が行くなんてことはないでしょうけれど、まぁ愛住君かしらね、生徒会長なんだし。
『哀抔さん、キミに頼みたい』
『なんで私なのよ、貴方の方が適任だと思うのだけど』
『人の痛みを一番理解出来るのは、恐らくキミさ、この生徒会の中でね』
まぁ上谷君よりは向いているとは思うけれど......
『どうなっても知らないから』
『信じているよ、キミのこと』
恥ずかしいこと言わないで頂戴。
見慣れない一軒家を前にする。
ここが不登校の子の自宅ね。
海崎健太、今回の依頼人に振られたことで登校しなくなった、か。
やっぱり恋なんてしても損するだけよ。
チャイムを鳴らし、名乗りを上げる。
『生徒会副会長の哀抔符夜雨です、健太君をお伺いしたく、馳せ参じました』
『どうぞ上がってください』
健太君の母親らしき人物が出迎える。
人の家に入る時はどうも暗い状況が多いわね、何故かしら。
『付いてきて』
言われたようにあとに続き、部屋の前を案内される。
『話しはドア越しでお願いします』
『承知しましたわ』
何者をも寄せ付けないと言わんばかりの殻、無理矢理破るワケにも行かない、でも言葉での解決が強引では無いとも思えない。
イヤ、ここまで来たんですもの、まずは話しを聞かなければね。
『こんばんは健太君、聞こえていますか?聞こえているなら返事をお願い』
少しの間のあとに小さな声が発せられる。
『誰ですか?』
良かった、答えてくれたわ......!
『失礼しました、哀抔符夜雨です、生徒会副会長をやっております』
『え?愛など不要?ああそういう名前なんですか......』
私の名前に食いついている。
『それでなんのようですか?』
『貴方と話したいの』
『誰に頼まれたんですか?』
『それは......』
貴方を振った娘、なんて言うワケにもいかないわよね。
『まぁどのみち話すことなんて......』
『それじゃ私の質問に答えて頂戴』
『答えたくない時は答えませんよ』
『構わないわ、それでは、嫌いな物はなに?』
『なんですかその質問!?』
やっぱり驚かれたわね。
『私は恋愛、貴方は?』
『ぼくは陽キャとか生徒会ですかね』
『理由を聞かせて?』
『みんな幸せそうだからですよ、なんというか、キラキラしてる、ぼくとは違うんだ』
『確かにそうかもしれない、私以外は』
健太君の沈黙に甘えて話しを続ける。
『恋愛関係で消えることの無い深い傷を負って、恋愛をしようなんて思えなくなったの、それに生徒会だって勝手に入れられたのよ』
『キラキラなんてしてないよ、私は......』
『哀抔さん......』
訪れる沈黙、しかしてそれは砕かれた。
ガラスでも割れたかのような、あまり聞きたくないような音が健太君の部屋から鳴り響く。
『健太君!?どうしたの!?』
ドアのカギが開かれる。
これを開けば無事では済まないでしょう、でも入るしかないわ。
『ゴメンなさい、入るわよ!』
位を決死てドアを開けた瞬間、バットでの一振が私を襲う。
腹部に直撃し、立つこともままならない。
『なんだ結構イケんじゃん、俺の肉奴隷には丁度良いな、この万歳座凶様のな!』
何者なのこの男は......
『しかしよぅ、俺様の誘いを断るなんて悲しいぜ、オラ!』
バットによる凶行は健太君にまで波及する。
ぐったりと倒れる健太君をまえに、いても立ってもいられなくなり......
『このまま外に出してやるよ健太君?』
『止まりなさい』
『はぁ?』
懐に添えた、復讐を果たすための拳銃を構えて見せた。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




