絵園さんと共同依頼
涙を流した女の子が夕焼けの日差しの入った生徒会室にたたずんでいる。
これが青春って奴なのかしら。
『それでは俺はここで失礼します、行くぞ上谷』
『うわぁ!引っ張らないでも行きますよ!』
男の子二人が退散していく。
『愛住君、聞きたいことがあるわ』
『なんでも聞いて』
『もしかして私と絵園さんの二人でこの依頼を......?』
『本当はポスターを書かせて終わりのつもりだったんだけど、こうなったら仕方ない!』
『ポスターだけってどういうことよ!?』
『会ってすぐの反応でわかっていることだと思うけど、彼女は純真なんだ、だからあまり不用意には依頼をさせたくないんだ』
私よりも生徒会としては先輩のはずなのにそんな扱われ方なのね。
『所で愛住君、まだ残っているのは何故?』
『心配なんだ、キミがまた自分の身体を傷つけるんじゃないかって』
『確かに約束は出来ないわ、今後また私は私自身を大事にしない行動を取るかもしれない、でも少しは私を信じて欲しいの』
『......わかった信じよう、ただしあまりにキミが自分をないがしろにしていたらその時は、ずっと僕の目の届く所に居てもらう』
『ええ、構わないわ』
愛住君には帰ってもらったわ。
元々二人で依頼を受けろと言ったのは彼なんですもの、当然よね。
『哀抔さんでしたよね、愛住君とはどういう関係で?』
『単なる生徒会仲間ですよ?』
『へー、ずっと僕の目の届く所に、なんて言われておいてですか、へー』
依頼人に愛住君との関係性を疑われている、同棲しているのがバレたらどうなるのかしら。
『あの、恋愛の依頼で来たんですよね』
『あっそうだそうだゴメンね話逸れて』
『慰めてやってくれない?振られたから』
二人でやってきて片方は涙を流している、恐らくは......
涙を流す女の子にハンカチを渡し、耳障りの良い言葉を並べる。
『これで涙を拭いて、落ち着いてからで良いので話して頂戴、なにがあったのか』
『あっ違う違う、この娘は小説読んで泣いてるだけ、振られたのはアタシ!』
なぁにそれ......
『アタシは赤梨ってんだ、こっちの泣いてる方は葵』
『でも慰めるってどうしましょう』
『私もやったこと無いわね』
むしろ私を慰めて欲しいくらいよ......
『まずは私共ににお話頂けませんか、そうすることで気分も晴れると思いますし』
話を聞かないことには始まりませんもの。
『幼馴染みの紫護といつものように話してたらなんだか妙な空気になっちゃって、勢いのままにコクったら冗談扱いされて軽くあしらわれたんだ』
正直慰めろと言われても、私は慰められる側ですもの、なんて言えば良いのかわからないわ。
『あなたの気持ちわかります!』
涙を流した絵園さんが赤梨さんの手を掴んで共感の叫びをあげる。
『ずっと一緒だった幼馴染みにやっと自分の気持ちを伝えたのに、こんなのつらすぎますー!』
『ちょっと手痛いってば!』
『あーもう一回落ち着きなさいな、ほらハンカチ』
『ありがとうございます......』
『でも振られたって割りには落ち着いて見えるわね貴女』
特になにがあったワケでもない二人が泣いて、紫護君に振られた赤梨さんはそんな様子も無い。
『やっぱりこうなるんだって、そう思っちゃって』
『心のどこかで諦めていたと?』
『うん、結局その通りになったけど、でもちゃんと言えてスッキリしたし、話も聞いてもらえたからもう良いんだ』
『全然良くありません!』
立ち上がる絵園さん。
『あなたの幼馴染みが今どこにいるかわかりますか!?』
『ええ!?多分グラウンドだけど......』
『今からその人の元に行きますよ!』
『そんな!アタシは話を聞いてもらうだけで充分だから!』
『哀抔さん!もちろんあなたもですよ!』
入り立てでも生徒会副会長なんだから受けた以上はやるべきだけれど、少し嫌そうな表情を浮かべよう、ささやかな抵抗よ。
『そんな顔してもダメですよ!ほら早く歩く!』
『ちょっと待って頂戴な、赤梨さんと紫護君を会わせてなにするつもり?』
『もう一度気持ちをぶつけるんです!』
『依頼人がもう良いと言っているのだから、そっとしておけば良いのよ』
『う~、でもでもほっとけないんですー!』
強引に私と赤梨さんの手を掴んで走り出す。
この娘、力強いわね......
夕焼けが彩るグラウンドに駆り出される私。
再び赤梨さんと紫護君が邂逅する。
『どうした赤梨?』
赤梨さんの想い人に絵園さんが青春的叫びを発する。
『もう一度だけで良いんです!もう一度だけ赤梨さんの話を......』
『無理だ、付き合うことはできない、何故なら......』
『俺は葵さんが好きだから!!』
私の後ろにいた葵が告白され、動揺している、というかいたのね。
『好きって言われるのは嬉しいんだけど、君のこと全然知らないし、それに葵が好きなのは赤梨だから......』
『それ初耳なんだけど!?』
なにこの三角関係......
『どうしましょう哀抔さん!』
『......ほっときましょう』
『ダメですよ!それじゃ!』
『そうだ!ねぇ紫護は哀抔さんのことはどう思うワケ?』
なんで急に私の話になるのよ......
『いや自己紹介で嫌いな物言う人はちょっと......』
あ?
結局この騒ぎはうやむやになって幕を閉じた。
まぁでも放課後に仲間内で騒ぐ関係も悪くはないんじゃないかしら。
爽やかに帰宅路を進み、その道中で赤い色を見ることになる。
足から血を流した大神君がいたのだ。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




