全校集会とポスターバトル
早朝から校長先生が大勢の生徒の前に立っている。
校長の話に生徒は退屈そうにしている。
それを私は後ろから見ていた。
『そろそろ僕らの番だ!準備いい?』
案外速いわね、長話も出来ないなんてそれでも校長なのかしら、まぁ話しが短いのは楽だけれど。
『バッチリっス!』
『問題無い』
『いつでもオーケーです!』
生徒会のみんなは朝から元気いっぱいね。
『哀抔さんはどう?』
『まだ整っていないわね、この立場で全校生徒の前に立つなんて初めてですもの』
『ほへー!意外ですね!』
私どんな印象を持たれているのかしら......
校長先生の短い話が終わり、次は私達生徒会の番。
前に出て見ればキャーキャー言われちゃって、まるでアイドルね。
『生徒会の最近の活動を説明をする前に、新しく就任した生徒会副会長を紹介します』
愛住君に促され、マイクの前に立つ。
『生徒会副会長の哀抔符夜雨です、転校してすぐに生徒会に入り、副会長の座に立ち、まだ右も左もわからぬ状態ですが、何卒よろしくお願い致します』
大勢の拍手と歓声が場を揺らす。
新メンバー発表ってこんなに盛り上がる物なの?
マイクの席を愛住君に戻し、生徒会の活動報告が始まる。
生徒の恋愛の手助けをする、気になるアイツの趣味趣向の調査に告白やデートのアドバイス。
恋を成就するよう導く類いだけでなく、成就しなかった恋から克服する物も請け負っている。
そういう意味では私も依頼する側の立場ね。
『人が恋をするのは素晴らしいことです、恋愛なんてと諦めている方でも気軽に相談に来て下さい、きっと恋をしたくなるはず!』
耳障りの良い言葉の羅列に拍手喝采、でも......
『ちょっと待って頂戴』
拍手の音で満ちていた体育館が一瞬で静寂へと変化する。
『私は恋愛を素晴らしい物だとは到底思えません、恋に目覚めた人間はどこまでも自己中心的で野蛮な存在へと変貌する、そう思わされています』
『ですので恋愛に関する愚痴等もお待ちしております、キラキラした物だけが恋愛ではありませんから』
ただただ恋愛を否定するような発言でも生徒は盛り上がりを見せている、愛住君程じゃないけどね。
生徒会の出番を終えて早々愛住君に詰められる。
『どういうつもりなの哀抔さん?』
『私ただ恋愛という感情を嫌っていたり、したくないと思っている生徒に寄り添っただけよ』
『考えを変えるつもりないワケ?』
『ええ、私は恋愛を否定し続けるわ』
『だったらキミをいつかその気にさせる!』
その告白染みたセリフに辺りは凍りつく。
『ええ!?会長ってフヨちゃんが!?』
『応援しますよ!』
『大胆にも程があるわ』
『いやその気にさせるってのは恋愛にね!?僕にじゃないから!』
『あっそうだ哀抔さん、今日はわたしと一緒に広報用のポスターを作成してもらいます!』
『ちょっとみんな!?』
『大神先輩いつまで固まってんスか、ホラ行くっスよ』
私は恋に堕ちたりはしないわ、もう絶対に。
生徒会室にて絵園さんとご対面。
『では同時に提示しましょう』
『精々ビビり上がらないことね』
一枚の紙を同時に表にする。
私の割れたハートの絵と絵園さんの小学生が持って来たら褒めたくなるような、カップルとその回りにハートがいっぱいの絵が現れる。
『さぁ審査員の皆様判定をお願いします!』
生徒会の男の子三人が選んだのは絵園さんの絵だった。
『納得出来ないのだけれど』
『何故ハートを割って選ばれると思ったのか逆に聞きたいよ』
『というかポスター作りも依頼なのかしら?』
『ああ学校からのね』
人と会う依頼よりは気は楽だけれど。
『とにかくこれで決まりっスね!』
『わたしだってやるときはやるんですから!』
絵園さんのかわいらしいドヤ顔を前に敗者たる私が言えることは......
『憶えていなさい、次に勝つのは私よ』
少しコテコテ過ぎたかしら......
『はい!忘れませんよ貴方のこと!』
この娘の笑顔は直視できないわ、あまりにもまぶしいから。
でもこれ貴女に負けることは無いとかそういうニュアンスが含まれていたりするのかしら?
なんにしても侮れないわね......
『にしても残念だなー、哀抔さんとコイバナできないなんて』
『それはゴメンなさい、でもそんなに残念がること?』
『だってせっかく生徒会にわたし以外の女子が入ったんだからそういう話したいなって』
『おーコイバナっスか?混ぜて下さい!』
コイバナじゃなくてコイバナの話ね。
『上谷君はみんなで楽しく遊ぶのが好きなだけでしょー?』
『そんなことないっスよ、オレだって人並みに恋を』
『今好きな人いる?』
『特定の誰が好きとかはないっスけど......』
『ほらやっぱりそれだ!』
『そういう絵園さんはどうなんスか!』
『わたしはその、まだまだこれからって言うか......』
『結局それなんスか!なんなんスかさっきのタンカは!』
微笑ましそうにする愛住君と興味の無さそうな大神君。
生徒会は平和ね。
紅茶を飲み、黄昏る。
こういう時間を過ごせることがきっと幸せなのでしょうね、でも私にその時間は不要だから。
平和な夕暮れをドアを蹴破る鈍い音が揺さぶりかける。
『あのー!恋愛絡みで相談ごとがあるんですけど!』
女子二人組によって、しかも片方は泣いている。
この物語はフィクションです。
犯罪行為を推奨、肯定する物ではありません。




