カルテNO3-1 情熱で雲が蒸発+5℃
転移オフィスは、いつも通りふわふわしていた。
雲のカウンターはぷにっと鳴り、受付妖精たちは紅茶をすすりながらのんびりと案内業務をこなしていた。
そこへ──
「俺がやる!俺が燃える!俺が世界を救うんだぁぁぁ!!」
突如、轟音のような叫び声が響き渡り、雲のカウンターが震えた。
受付妖精の紅茶が蒸発する。
「えっ、熱っ!?誰!?雲が湯気になってる〜!」
現れたのは、筋肉質で汗だくの男。赤いバンダナ、燃えるような瞳、そして使命感が服を突き破りそうな勢い。
「俺の名はアツミ・ゴウ!使命あり枠で転移希望だぁぁぁ!!」
受付妖精「はいはい、使命ありですね〜!……って、声がでかっ!雲が揺れてる〜!」
案内板が熱気でふにゃっと曲がる。
女神様が実況スタジオから顔を出す。
「この人、暑すぎる〜!実況するの体力いる〜!でも使命感は本物っぽい〜!」
カルテが即座に作成される。
『アツミ・ゴウ:使命あり枠。
情熱がすべてを凌駕する。
スキルは火属性に偏りすぎ。
叫ぶだけで魔力が上がる。副作用:周囲がうるさい。』
女神様は炎マークのシールを貼りながら、スキル開発部に指示を飛ばす。
「この人には《情熱チャージ》《汗だくバリア》《火属性過剰》《友情爆発》、全部渡しちゃお〜!」
スキル開発部の妖精たちが、熱気で髪を逆立てながらファイルを準備する。
「叫ぶだけで魔力上がるとか、最高にうるさくていい〜!」
「汗でバリア張るとか、見た目が不快で最高〜!」
「友情爆発は、仲間がピンチになると全員燃える仕様で〜!」
そして、転移ポータルの前。
アツミ・ゴウは、虹色の渦を前に拳を突き上げた。
「この拳に、俺の使命を込めて──いざ、転生だぁぁぁ!!」
女神様が手を振る。
「いってらっしゃ〜い!使命あり枠、熱量過多だけど、楽しく生きてね〜!」
男は、渦に吸い込まれていった。
その瞬間、女神様の実況スタジオが起動する。
「は〜い!始まりました、アツミ・ゴウさんの“情熱で世界を焼き尽くす”旅〜!
初日から汗だくの予感〜!」
こうして、使命あり(本気)・情熱全開の男の旅が始まった。
世界は救われるかもしれない。
ただし、ちょっと焦げるかもしれない。




