カルテNO2-4 使命完了(自称)、そして次の理へ
村の朝は、昨日より少しだけ静かだった。
魔物は森へ帰り、干し芋は納屋に戻り、村人たちは「まあ、結果的には助かった」と言っていた。
その中心で、ダーク=フレア=カゲミツは焚き火の前で、干し芋を焼いていた。
「我が右腕は、今……静かだ。世界の理が、ようやく安定したか……」
肩こりが治まっただけだった。
村人のひとりが、そっと声をかける。
「あの……ありがとうございました。魔物のこと、助かりました」
「礼は不要だ。我が使命は、理を正すことにある。次なる歪みが、我を呼んでいる……」
村人「……どこへ?」
「それは、まだ我にも見えぬ。だが、風が告げている。『次の封印は、北の地に眠る』と──」
女神様実況(雲ソファより)「正雄さん、使命完了(自称)〜!でも次の封印、たぶん納屋じゃなくて物置〜!」
スクリーンには、カゲミツが村を出ていく姿が映っていた。背中には包帯、腰には杖、ポケットには干し芋。
『旅の記録:使命あり(自称)枠。
封印解除:納屋。
魔物撃退:くしゃみ。
世界救済:たぶん達成。』
女神様は、カルテにそっと星マークを追加した。
「この人、ほんとに最高だった〜!次の転移者、どうしよっかな〜」
受付では、雲のカウンターが「ぷにっ」と鳴る。
妖精「次の方〜!使命あり/なし/とりあえず楽しく生きたい、どれにします〜?」
新しい転移者が、虹色ポータルの前に立っていた。
その背中を、女神様が見守る。
「正雄さんの旅、ちゃんと誰かに届いた。だから次の子も、きっと大丈夫〜!」
スクリーンの端には、カゲミツの姿が小さく映っている。
「我が使命は、終わらぬ……世界の理は、常に揺らいでいる……」
風が吹いた。
肩が、少しだけ疼いた。




