カルテNO2-1 ダーク=フレア=カゲミツ(影光 正雄) 使命あり(自称)
雲のカウンターが「ぷにっ」と鳴いた。
転移オフィスの受付に現れたのは、黒いロングコートに身を包んだ中年男性。
肩には謎の包帯、腰には木製の杖(本人曰く「封印された魔剣」)。
「我が魂は、世界の理を正すために転生を望む……」
受付妖精は、紅茶をすすりながら眉をひそめた。
「え〜っと、使命ありコースですね〜。……たぶん自称ですけど〜」
案内板には急遽、手書きの文字が追加された。
『使命あり(自称)/使命なし(現実)/とりあえず痛く生きたい』
妖精:「使命ありはあっち〜!でも、女神様の気分次第でスキルがふざけるかも〜!」
男はゆっくりと歩き出す。名は──
「我が名はダーク=フレア=カゲミツ……かつて“影光 正雄”と呼ばれていた者だ」
元・市役所職員、52歳。退職後、異世界転移を希望。
理由は「世界の理が歪み始めているから」
その様子を、雲ソファで眺めていた女神様が、ぷにっと笑った。
「この人、絶対面白くなる〜!カルテに“世界観崩壊注意”って書いとこ〜」
カルテにはこう記された。
『ダーク=フレア=カゲミツ:中二病炸裂枠。
世界を救いたいが、スキルが全部ズレてる。
妄想力は神域レベル。現実とのギャップが最大の魅力。』
女神様は、星マークのシールを貼りながら、スキル開発部に指示を飛ばす。
「この人には《漆黒の右腕(ただの肩こり)》と《封印解除・誤作動版》、あと《中二語変換》も追加〜!」
スキル開発部の妖精たちが爆笑しながらファイルを準備する。
「肩こりを魔力の暴走に見せかけるスキル、最高〜!」
「封印解除したら納屋が開くやつ、もう作ってあるよ〜!」
「中二語変換は、語尾が“……我が魂が震える”になる仕様で〜!」
そして、転移ポータルの前。
ダーク=フレア=カゲミツは、虹色の渦を前に立ち止まる。
「この渦……世界の理が集約された門か……」
女神様が手を振る。
「いってらっしゃ〜い!使命あり(自称)だけど、楽しく生きてね〜!」
男は、渦に吸い込まれていった。
その瞬間、女神様の実況スタジオが起動する。
「は〜い!始まりました、ダーク=フレア=カゲミツさんの“世界救済(予定)”な旅〜!
初日から肩こりの予感〜!」
こうして、世界を救いたい中二病炸裂おじさんの旅が始まった。
使命は本物か、妄想か──
それは、彼の“封印解除”が何を開けるかにかかっている。




