カルテNO1-4 使命なしの旅、ちょっとだけ役に立つこともある
洞窟の奥で魔物を退けたグランとカイルは、壺を回収し、村へと戻っていた。
ぬいぐるみ「明日はもっと派手にいこうね!」
「いや、控えめでいいから!」
カイルはツッコミ疲れで、そっと木陰に腰を下ろす。
グランは壺をそっと地面に置いた。《マニュアル・ビジョン》が自動発動。
『この壺:開けると3日間、語尾が“にゃん”になる。耐性がないと人格崩壊の恐れあり』
「……やっぱり開けないでおこう」
カイル「絶対開けるなよ。なんども言うけど俺、語尾“にゃん”とか無理だからな」
ぬいぐるみ「グラン、開けてみよ!」
「やめて!」
村に戻ると、広場では人々が集まっていた。壺の騒動を聞きつけた村長が、ふたりに頭を下げる。
「助かったよ。あの壺、昔から厄介でね。君たちが回収してくれて、本当に助かった」
「えっと……僕たち……」
「使命がなくても、誰かの役に立つことはある。それだけで十分だよ」
グランは、少し照れくさそうに笑った。
カイルは、ぬいぐるみを抱えて「こいつが勝手に動くせいで、だいぶ苦労したけどな」とぼやいた。
女神様実況(雲ソファより)「グランくん、カイルくん、今日も最高〜!使命なしなのに、ちょっとだけ役に立っちゃった〜!旅の面白さスコア、安定の高評価〜!」
スクリーンには、ふたりが夕焼けの村を歩く姿が映っている。
グラン「次はどこに行こうか」
カイル「爆発しない場所がいいな」
ぬいぐるみ「むしろ爆発しに行こう!」
女神様は、マカロンをかじりながら、ふたりのカルテにそっとメモを加えた。
『旅の記録:使命なしでも、ちょっとだけ役に立った日。
ツッコミとぬいぐるみの相性、予想以上に良好。』
「この子たち、ほんとに推しだった〜!でもそろそろ、次の転移者を迎えよっかな〜」
転移受付では、雲のカウンターがぷにっと鳴る。
「次の方〜!使命あり/なし/とりあえず楽しく生きたい、どれにします〜?」
新しい転移者が、虹色ポータルの前に立っていた。
その背中を、女神様が見守る。
「グランくんたちの旅が、次の子にも届きますように〜!」




