表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の転移オフィス・エンタメ課 〜転移者の数だけ物語がある〜  作者: 猫じゃらし
8人目 使命あり!チャンネル登録よろしく!
32/80

カルテNO8-4 旅の終わりは、街の改造計画書

異世界の街は、石畳の広場を中心に、古い建物が並んでいた。

屋根は傾き、ベンチは割れ、雨水の排水路は詰まり気味。

人々は慣れた様子で過ごしていたが、どこか疲れた空気が漂っていた。


そこへ、駒井ジュンが現場入りした。

工具ベルトを腰に巻き、スマホ型カメラを掲げ、地図を広げる。


「よっしゃ〜!街の改造計画、始めま〜す!まずは広場にベンチ、屋根、あとDIYカフェも作っちゃおうか〜!」


《説明動画詠唱》発動。

空に字幕が浮かび、BGMが流れ始める。

『街の改造計画/広場整備/住みやすさ向上』


市民たちは、最初こそ戸惑っていたが、ジュンの勢いと字幕に引き込まれていく。

「この人、何言ってるかよくわからないけど……なんか、楽しそう」

「DIYカフェって何……でも、ちょっと見てみたいかも」


ジュンは《工具召喚》で、折りたたみ式の作業台と、謎に光るスパナを呼び出す。

《即席バリケード》を応用し、ベンチを組み立て、屋根を設置。

見た目は雑。だが、雨をしっかり防ぎ、座り心地も悪くない。


広場の一角には、木材と布で作られた小さなカフェ風の屋台が完成する。

看板には、手書きでこう書かれていた。

『DIYカフェ/工具貸し出しあり/休憩自由』


市民たちは、少しずつ集まり始める。

誰かがベンチに座り、誰かが屋根の下で雨を避け、誰かがカフェでお茶を飲んだ。


女神様実況(雲ソファより)「ジュンさん、旅の締めは街ごと改造〜!DIYカフェって何〜!?でも、街の空気がちょっとだけ明るくなってる〜!」


カルテには、手書きでこう記された。


『駒井ジュン:ノリ枠。

実況乗っ取り済。

工具召喚安定。

街の評価:雑だけど、なんか住みやすくなった。』


その夜、広場のベンチで市民たちが語り合った。

「この人、説明は動画っぽかったけど……なんか、居心地よくなったね」

「実況がうるさかったけど、街がちょっとだけ優しくなった」


ジュンは、スマホ型カメラを空に向けてつぶやいた。

「現場完了〜!次の転移者、工具は持ったか〜?ノリと勢い、あとちょっとした字幕があれば、世界は変えられるっしょ」


字幕が空に浮かぶ。

『街改造完了/旅終了/次の現場へ』


女神様は、実況スタジオで満足げに頷く。

「この人、ほんとに実況乗っ取った〜!でも、街がちょっとだけ住みやすくなった〜!次の転移者、準備はいい〜?」


転移オフィスの案内板には、新しい文字が追加された。

『DIY枠/実況乗っ取り済/工具支給あり/ノリ重視』


そして、虹色ポータルの前に、新しい転移者が立っていた。

その背中を、女神様が見守る。


スクリーンの端には、ジュンがベンチに座っている姿が映っていた。

工具ベルトを外し、カフェの屋台でお茶を飲みながら、

「次の現場、どこかな〜」と笑っていた。


風が、静かに吹いた。

字幕が、ひとつだけ浮かんだ。


『チャンネル登録、ありがとう』


──旅の記録:ノリと工具で世界をちょっとだけ改造した転移者。

見た目は雑。実況はうるさい。

でも、誰かが笑ってくれたなら、それで十分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ