カルテNO8-3 魔物襲来!即席バリケードで実況乗っ取り
橋の修理が終わった夜、村は久しぶりに静けさを取り戻していた。
川の音が穏やかに響き、村人たちは焚き火を囲んで語り合っていた。
「見た目は雑だったけど、橋、ちゃんと渡れたな」
「説明が動画っぽかったけど、なんか安心感あった」
その輪の少し外で、駒井ジュンは工具ベルトを外し、スマホ型カメラを空に向けていた。
「よし、橋は完了。次は広場の屋台、現場入り準備っと」
カメラが光り、空に字幕が浮かぶ。
『現場完了/橋修理済/広場の屋台、明日から着工』
その瞬間──村の外れから、叫び声が響いた。
「魔物だ!広場に向かってる!」
村人たちが慌てて立ち上がる。
広場には、祭りの準備で並べられた屋台がずらり。
その奥から、黒い影が迫っていた。
ジュンは、工具ベルトを再装着。
「よっしゃ、現場急変!防御施工入りま〜す!」
《即席バリケード》発動。
屋台の木材、テントの骨組み、余った布──すべてを組み合わせて、広場の入口に防御壁を構築。
見た目は雑。だが、魔物の突進を受け止めるほどの強度だった。
村人「えっ、あれって屋台の材料じゃ……」「なんであんなに頑丈なの……?」
ジュンは、スマホ型カメラを掲げる。
《説明動画詠唱》発動。
「はいどうも〜!今日は異世界の魔物対策DIY〜!使う素材は現地調達、組み方はノリと勢いで〜!」
空に字幕が浮かび、BGMが流れ始める。
魔物が足を止める。
目が字幕を追い始める。
女神様実況(雲ソファより)「えっ!?実況、乗っ取られてる〜!字幕が勝手に流れてる〜!しかも魔物が動画見てる〜!旅の面白さスコア、実況乗っ取り枠で急上昇〜!」
魔物「……この壁、壊れない……てか、動画のBGMが耳に残る……」
ジュン「現場は混乱してるけど、実況は安定してま〜す!」
魔物は、しばらく壁を見つめたあと、静かに踵を返して去っていった。
村人たちは、呆然としながら拍手を送った。
「この人、実況で魔物を止めた……」
「説明は雑だけど、結果は完璧だった……」
その夜、広場の屋台は少しだけ傾いていたが、誰も文句は言わなかった。
ジュンは、屋台を見上げてつぶやいた。
「異世界でも、現場は予測不能。でも、ノリと工具とちょっとした字幕があれば、なんとかなるもんだね」
スマホ型カメラが、そっと光った。
字幕が空に浮かぶ。
『魔物対応完了/屋台損傷軽微/次は街の改造計画』




