表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の転移オフィス・エンタメ課 〜転移者の数だけ物語がある〜  作者: 猫じゃらし
5人目 使命なし 世界征服をしたい少女
20/80

カルテNO5-4 征服はまだ途中、でも誰かの記憶に残ればいい

街の朝は、静かだった。

図書館の扉が開き、魔導ランプが灯る。


黒羽南は、制服姿のまま、いつもの席に座っていた。

机の上は完璧に整い、椅子の角度は理想的。

《支配領域:半径3m》は、今日も異常なほど美しく機能していた。


司書「おはようございます。今日も……征服、ですか?」

ミナミ「ええ。世界は、私のものになる予定です」


司書は、少しだけ笑った。

「……その予定、なんだか好きです」


広場では、昨日の演説の話題がまだ残っていた。


「あの子、なんかすごかったよね。光とか音とか」

「でも内容は図書館の延長だったよ?」

「それがいいんだよ。なんか、誠実で」


猫「にゃー(好感度、上昇中)」


そのとき──空に、申請書がひとつ舞い上がった。


『転移記録:黒羽南

使命:なし

野望:世界征服(予定)

実績:図書館の利用時間、15分延長

評価:静かに記憶に残る存在』


女神様実況(雲ソファより)「ミナミさん、使命なしでも物語完了〜!世界征服はまだだけど、図書館はちょっとだけ支配済み〜!」


スクリーンには、ミナミが図書館を歩く姿が映っていた。

制服の裾が揺れ、猫がついてくる。

その背中には、征服計画書と、少しだけ柔らかくなった表情。


『旅の記録:征服予定枠。

魔法:地味。演出:派手。

世界救済:なし。

市民評価:なんか好き。』


女神様は、カルテにそっと星マークと猫のシールを追加した。

「この子、ほんとに静かで最高だった〜!次の転移者、準備はいい〜?」


受付では、雲のカウンターが「ぷにっ」と鳴る。


受付妖精:「次の方〜!使命あり/なし/とりあえず図書館に行きたい、どれにします〜?」

新しい転移者が、虹色ポータルの前に立っていた。


その背中を、女神様が見守る。


「ミナミさんの旅、ちゃんと誰かに届いた。だから次の子も、きっと大丈夫〜!」

スクリーンの端には、ミナミの姿が小さく映っている。


「……世界征服は、まだ途中です。でも、誰かの記憶に残ったなら──それは、支配の第一歩です」


風が、静かに吹いた。

猫が、彼女の足元で丸くなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ