カルテNO4-3 夢の再申請、涙と希望の魔法
街の夕暮れは、金色に染まっていた。
石畳に灯るガス灯が、まどかのヒールの音をやさしく包む。
彼女は、街の広場でひとり、魔法少女としての初日を振り返っていた。
変身は成功。魔導暴走車も止めた。
でも──
「……これでよかったのかな」
そのとき、声がした。
「あなた、魔法少女……ですよね?」
振り返ると、そこには小さな少女が立っていた。
年の頃は10歳くらい。手には、くたびれたぬいぐるみ。
「私も、魔法少女になりたいんです。
でも、ママには“そんなの現実じゃない”って言われて……」
まどかは、少しだけ微笑んだ。
「夢って、現実じゃないからこそ、意味があるんだと思う。
現実に疲れたとき、夢があるだけで、前を向けるから」
少女の瞳が潤む。
「……でも、もう遅いかも。私、もう10歳だし……」
まどかは、そっと手を差し伸べた。
「夢に期限なんて、ないよ。
だから──再申請、してみようか」
《夢の再申請》発動。
空に、申請書が舞い上がる。
「希望再発行申請書」「魔法少女適性再評価報告書」「夢の継続意志確認書」──
すべてが光に包まれ、星型のリボンへと変化する。
少女の胸元に、ひとつの光が宿る。
「……あったかい……これが、魔法?」
まどかは、涙を浮かべながら頷いた。
「うん。それは、あなたの夢が形になった魔法。誰かに認められた瞬間、夢は魔法になるんだよ」
女神様実況(雲ソファより)「夢の再申請、完了〜!涙と希望で魔法発動〜!年齢?関係ない〜!夢は、いつだって再申請できる〜!」
その夜、少女はぬいぐるみを抱きながら眠った。
まどかは、街の屋上で星空を見上げていた。
「……私の魔法が、誰かの夢を守れたなら──それだけで、十分です」
風が、静かに吹いた。




