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タイトル未定2025/08/22 09:18

挿絵(By みてみん)


 ◆ある期待



 四国にはよく台風が上陸した。

 生家は山奥にあったので、雨台風は怖くなかった。それどころか、村に架かった土橋がどうなっているか、台風が通過するのを待ちかねて見に行ったこともあった。


「あと、もうちょっと降ったら、流されとったなあ」

 などと近所の悪ガキと眺めていた。

 橋が流され、学校が休校になることへの期待がどこかにあった。不謹慎な話である。


 下流域の住民は雨台風に蹂躙(じゅうりん)されっぱなしだった。

 治水が悪いので、低地にある家は浸水する。

「台風のたびに家が浸かって、つらかった」

 と述懐していた方もいた。その心境は当事者でないと、分からない。


 ◆治水には成功したが


 筆者の住んだ村に通じる橋が、流されたこともあるらしい。橋げたの後が残っていた。川岸の低い場所に架けられた橋だった。

 あの位置に橋を架けたとなると、それほど警戒していなかったのではと推測される。おそらく当時、何十年に一度くらいの大雨だったのではないか。


 この教訓からか、次は高い位置に吊り橋が設けられた。台風の後、橋の上から濁流を眺めていた。水は、はるか下方とはいえ、あまり気持ちのいいものではなかった。


後年、上流域にダムが建設された。多くの住民が川の氾濫を心配しないで済むようになった。治水に成功した例だ。ただし、最近の川はひとたび牙を剥くと怖い。


「どこから、あんな大きな木が流れてくるのだろう」

 川の近くに住む、ある方は、最近の川の異変に気付いていた。

 手入れされることなく放置された杉の大木である。上流で土石流が発生し、倒れた杉が流されてきたのだろう。この流木は時に堤防や橋を破壊し、民家に襲いかかる。ニュースでよく目にする映像だ。


 ◆ガラスのドアも砕く風速


 台風が接近すると、お隣さんがよく我が家に避難した。主人は出稼ぎに行っており、奥さんと子供たちだけでは不安だったのだ。大人の心配をよそに、子供たちは夜遅くまで騒いでいた。


 恐らく、第二室戸台風だったと思われる。四国を縦断し、目が中央部を通った。暴風をまともに受けたのか、(かや)ぶき屋根の我が家は浮き上がった感じがした。

 村によっては、屋根が吹き飛ばされた家もあったと聞く。


 第二室戸台風は一九六一年(昭和三六)九月一六日に高知県室戸岬に最低気圧九二五ヘクトパスカルで上陸した。室戸岬では最大風速六六・七メートル、最大瞬間風速は風速計が振り切れ、計測不能だった。

 この日、高知県内にいた女性はその恐怖を

「(勤めていた)診療所玄関のガラスが、風船のように膨らんで砕け散った」

 と語っていた。


 ◆災害列島ニッポン


 当時としてはとてつもない超大型台風だった。死者・行方不明二百人余、負傷者約五千人という甚大な被害を出した。

 第二室戸台風クラスのものは、今日では必ずしも稀有(けう)ではなくなっている。進路にしても、台風銀座とされる沖縄・九州・四国・近畿を通らないものもある。


 日本中が風水害の脅威にさらされている。それは自然災害とばかり言ってられない。

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