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おやすみなさい

作者: 雨の日

初投稿でございます。

短いストーリーですが、最後まで読んでくれると嬉しいです。

精神的に辛い方、病んでいる方は閲覧をオススメしませんのでご了承ください。


11月の夜は早い。

既に落ちて姿を消した太陽と、白い光を放つ月。

今日は天気が良かった。風も少し冷たいが心地よい。


人気のない道をゆっくりとした足取りで進む男。

そして、その男の隣を同じスピードで歩く少女。

傍から見たら危ない現場に見えるが、これは間違いなく少女の意思で彼について行っているのだ。


「……私ね、好きなことがあったの」


不意に少女が口を開く。

男は足を止めることも、それに返事をすることもない。

ただ、黙って少女の話を聞いている。


「将来の夢は漫画家だったんだぁ〜意外でしょ?」


どこか懐かしげに呟いた少女は息を吐いて続けた。


「小学校…ううん、そのずっと前から…物心ついた時から絵を描いてた。すごく好きだったの。それに、私の絵が上手だって皆が褒めてくれた。先生も、友達も……親も」


「………」


悲しそうな顔をする少女を見ることなく、男は淡々と歩を進める。何か言葉をかけようとする素振りも見せない。

そもそも、彼等はどういう関係なのだろうか。


「……それでね」


だが、少女は気にしていない様子だ。

むしろ安堵しているようにさえ見える。


「私は色々な影響を受けやすい人間だった。アニメで見た女の子が髪を短くしていれば、同じように長かった髪をバッサリ切ってショートにした」


その時のことを思い出したのか、少女はふふっと笑う。


「その美容師さんが下手くそで…私、おばあちゃんみたいな髪型にされちゃったの!友達に見せたらすごく微妙な反応されて…子供ながら傷ついたなぁ〜」


男は少女とともに笑うこともしない。

だが、足を早めることもしない。

少女は続ける。


「小学6年生くらいの時かなぁ…遠い土地に転向してね。仲が良かった子と離れ離れになった。でも、不安や哀しさはあんまりなかったよ。多分…私は変化や刺激が好きなんだと思う。…とにかく、新しい生活にワクワクしていた」


少女が言い終わったところで、男が右に曲がった。

少女はワンテンポ遅れ、慌てて彼の隣に行く。


「ずっと真っ直ぐだと思ってたぁ〜あはは!」


明るく笑う少女は男に見向きもされない。

また少女は話し始める。


「どこまで話したっけ?……あ、小学校のところね。私、そこで多分いじめられてたんだと思う。でも、鈍すぎて気づかなかった!さっきみたいに私ってホント鈍くてとろいんだよねぇ〜あははっ!」


「……」


「んで、中学高校は私立の頭のいい学校に行かせてもらったの!恵まれてるなぁ…感謝しなきゃだよねぇ…!」


うんうんと1人で頷く少女だが、突然その表情が暗くなった。


「……朝が嫌になったの、いきなり」


重く口を開く。


「親が離婚して、たった1人の兄弟が引きこもりになっちゃって……お金に余裕がなくなった」


「私は頑張りたくて…でも、勉強が嫌いで嫌いで…我儘な私は結局、滑り止めの大学にしか行けなかった」


ぴたりと少女の足が止まる。

男は歩き続け、足を止めない。


「……勉強ができなくなった。掃除ができなくなった。洗濯が。食事が。起きることが。全部。……嫌になった」


しばらく下を向いて立っていた少女は、また男の隣へ駆け寄る。小さく微笑んだ表情は少し痛々しい。


「甘えかなぁ…普通のことができないんだよねぇ…周りに迷惑掛けたくないのに。こんな病んでるみたいな思考も気持ち悪くて嫌だなぁ…」


すっと両手を頬にあてた少女はぺしぺしと自分の頬を叩いた。


「何を見ても、羨ましくなっちゃった」


絞り出すように少女はそう言う。

相変わらず少女のことなど、お構いなしに歩みを進める男。

少女は息をもう一度ゆっくり吐いた。


「私は無能だ。私は無価値だ。……私は、めんどくさい。誰にも嫌われたくないし、足を引っ張りたくない。だらしない自分が本当に嫌い」


「……1回だけ、親に相談したの。そしたら…気を強く持って努力すれば上手くいくって、励ましてくれた。…はは、…優しいよね。なんで、こんなくだらないこと相談しちゃったんだろ…。バカみたい。何を望んでこんなこと言ったんだろ…」


声を震わせる少女は弱々しく笑う。


「……ずっとひとりぼっちみたい」


「………」


少女が一言、そう言った時。

足を止めることがなかった男がふと足を止めた。

そして、空をゆっくり見上げる。


「………明日も晴れだな」


ぽつりと男はそう零した。


「……あ…、はは……そうだね!…久しぶりだなぁ…上を見たのは……」


少女も男の隣で空を見上げる。

キラキラと白く輝く月。

雲ひとつない晴れた夜空。


「……天気なんて、興味なかったから……ちゃんと見た事なかった………。ありがとう…。」



そう男にお礼を言った少女は、さっきとは違う優しい微笑みを浮かべた。


「…私の話、黙って聞いてくれてありがとう」


すっと少女が男から離れる。その瞬間、少女の姿がゆらゆらと揺れ……見えなくなった。


「……ん、なんか肩凝り治った?」


少女が消えた瞬間、男は首を傾げて腕を回す。

夕方からの急な肩凝りが解消されたみたいだ。



━━━━━━━━━━━━━━━

《夜のニュースです。先程、Y県で女子大生の遺体が発見されました。警察は自殺とみて詳しく調べる見込みで…》






未成年だけど、あっさり買えたお酒。

結構高いんだなぁ。

あとはこれを全部飲めばいいのかな?

部屋を片付けて。パソコンとスマホは初期化っと。

よし。準備できた!やれば出来るじゃん!



じゃあ、おやすみなさい。

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