マリーゴールドに囚われて
初投稿です。優しく見守っていただけますと幸いです。
なお、誤字が多いです。ご指摘いただいてありがとうございます。
私は死んでしまいました。
ただ幸せになりたかっただけ。
あなたは私を幸せにはしてくれませんでした。
残酷なあなた。私を見てくれなくなったあなた。
どうして私の事は信じてくれなかったのですか。どうしてあの子の言葉を信じて私を見てくれなかったですか。
願わくば、来世では幸せになりたい。あなたのいないところで。
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アリネット・ルクテリアはかわいそうな子だった。
伯爵家の娘として生まれ何不自由なく過ごせただろう幼少期に、最愛の両親を事故で亡くした。
亡き父の弟夫婦に引き取られたものの、幼少期に受けるはずだった愛情どころか叔父には嫌われ疎まれ、いない存在として扱われた。両親が残した遺書により、アリネットがルクテリア家の正当な後継となってしまい、存在を疎まれたのだ。叔母からは虐待を受けた。叔母の想い人がアリネットの父であり、姿形が母そっくりなアリネットがどうしても許せなかった。
「この忌々しい黒い髪、あの女が私のあの人を奪ったのよ。あんたなんていなくなればいいのよ。」
彼女の感情はどんどん消えていった。
そんな蔑まれたアリネットには婚約者がいた。まだ幸せだった両親がいた時に決められた婚約者。彼の名前はユリウス・ クロネスト。公爵家の次男であり、幼なじみであったユリウスはアリネットにとってただ1つの希望であった。ユリウスだけが大事な存在、頼ることができる存在。ユリウスにとってもアリネットは大事な存在であった。愛しい幼なじみ、守るべき存在であった。彼女は彼にだけ感情を向けることができた。
「愛しています、ユリウス様」
「私も愛している、必ず君を幸せにするよ。」
しかし、それを面白く思わなかった従姉妹であり、義理の妹のマリーゴールド・ルクテリア。彼女はアリネットがしあわせになるのが嫌だった。アリネットのただ一人の人、ユリウスを手に入れようと画策する。最初は、気にも止めなかったユリウスだが、次第に噂を少しずつ悪い方に考えるようになり疑惑を持つようになってしまった。アリネットは必死に噂を否定した。だが次第に少しずつ2人の距離は空いていってしまったのだ。
マリーゴールドは1つ罠にかけた。アリネットが他の男と逢引していると。信じられないユリウスはマリーゴールドに連れられとある夜会に人影少ない中庭で逢引する男女の姿を見た。その女の髪の色は遠くからでもわかる黒色。それはアリネットの髪の色であった。そしてその現場には自分があげたはずのアリネットのブローチが落ちていたのだ。疑惑が確信に変わってしまった、罠とも知らずに。
そこからのアリネットは絶望でしかなかった。信じていたユリウスが自分に向かって嫌悪感を向けるようになったのだ。
「君のことがわからなくなった。」
「もう僕は必要ないだろう。他に頼れる奴がいるのだろうそちらに行けばいい。」
「もう僕の前に現れないでくれ。」
アリネットは何度もユリウスを説得した。
ーー裏切ってなんかいない。
ーー私はあなたしかいない。
ーー置いていかないで。
ーー行かないで。
ーー愛してるって言ったじゃない。
「婚約を破棄しよう。」
アリネットは1人になった。孤独になったアリネットは生きる意味を見失ってしまった。
もう死んでしまった両親の元に行きたいと毎日毎日思うようになってしまった。
最悪なことに、ユリウスの新しい婚約者は自分から何もかも奪っていったあのマリーゴールドであった。マリーゴールド毎日毎日ユリウスに愛されている自分を自慢した。もう目の前が真っ暗になってしまった。
もう何も見たくない、もう傷つきたくない。
お父様とお母様のもとにいきたい。
とある日のルクテリア家の中庭でユリウスとマリーゴールドが散歩していた。幸せそうに歩く2人を遠くから眺める。心が強く痛んだ、見えない血を流し続け心が壊れて行く。そんな中、2人を襲う侵入者が現れたのだ。マリーゴールドはアリネットを虐め蔑むほかにも、下級貴族令嬢を虐めていた。自分以外の人間が幸せになるのが嫌だった。恨まれても仕方がない傲慢で自己中心的な性格をしていた。その虐めていた中の令嬢がつかわせたであろう侵入者、短剣を握る男は明らかにマリーゴールドを狙っていた。
アリネットは頭で考えるよりも先に体が勝手に動いた。自分のことを裏切った2人には関わらず、アリネットは自分の身を呈して2人を守った。
腹部から溢れるおびただしい血。意識が遠のく中、聞こえる悲鳴、自分の腹を必死に抑えるユリウスは泣きながら必死に彼女に叫んだ。
「…どうして、どうしてなんだ。」
薄れゆく意識の中、口の中は鉄の味がする。
「…アイシテタ……あなたしかいなかった……悲しかった憎かった……死んでしまいたかった……だからいいの。………これであなたから…やっと…」
ゴフッと口から血が咳き込む。もう私は生きていけないだろうとアリネットは自分の死期を理解した。
次第に腹部の痛みも寒気も無くなり、ぼやける視界の先に父と母の姿を見た。
「おかあさ…ま…おと…さま…そこ…に…いた…の…ね……」
アリネットは久々に喜色に満ちた笑顔を見せ両親の元は向かった。遠く足元から懺悔と泣き叫ぶ声が聞こえる。
私が悪かった、行くなと。
ここで私のアリネット・ ルクテリアの生は終わった。
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そんな酷で悲しいアリネットの前世を持つ天ヶ崎アリア。前世では一人に頼り切った故に裏切られ孤独となった。今世では大切な人に感謝をおしまず、誰かに依存するのではなく、一人でも強く生きられるようにしよう。そして日々の小さな幸せを大事にした。
前世の影響か感情の起伏が少し乏しいのにもかかわらず大事にしてくれる両親を心から愛した。
いついなくなるか分からない、幸せは唐突に無くなることもあると知っていたので、惜しむことなく感謝の気持ちを伝えるようにした。
ーーありがとう、二人の娘でよかったと。
自分をお世話してくれるお手伝いさんにも、
ーー美味しかった、ありがとう。
自分の送り迎えしてくれる運転手にも、
ーーいつも送り迎えきてくれてありがとう。
アリアの周りの大人は笑顔で溢れていた。まだ小さなレディであるアリアの感謝の気持ちは心を温かくする。そこには確かに小さな幸せが沢山溢れていた。
天ヶ崎アリアと大手企業の社長令嬢として生まれ、この幸せな暮らしがいつ無くなるか分からないと自分の力で立つために、幼い頃からできることを何でもやった。勉強面はもちろん、護身術から茶道、スポーツ面では弓道から水泳、テニスと幅広く身につけた。社交マナーは前世と近いものがあり、7歳にして多くを身につけた超人とも言える令嬢に育った。
ある日、裕福な子供たちが集まるパーティがあった。そこには親の力で少し傲慢になった子供や、世間知らずな純粋無垢な子供、親の顔色を探る親に従順な子供など様々いた。アリアの周りには多くの子供たちが集まった。しかしどの子供たちに大しても同じ対応で一定の距離を図っていた。前世の記憶があるからか、同世代の裕福とされる子と付き合うのを苦手としていた。
そして、前世切り捨てられたはずのものが目の前にやってきた。
「如月侑里です、よろしくおねがいします。」
彼はアリアと同じくとある大企業の御曹司であった。顔は他の子と比べると非常に整っており、周りの女の子たちで彼を熱を籠った目で見ていた。
姿形が変わってもアリアにはわかった。彼、如月侑里はユリウスの生まれ変わりだと。
「アリアさん、仲良くしてね。」
前世であるユリウスの時と変わらない朗らかな笑顔でアリアに言う。お互い何も知らない初対面であれば好印象を受けるだろう。
しかし、アリアは違った。
前世の時とは違う、他の子に見せる全く同じ微笑で答えた。
「ええ、よろしくね。他の子もあなたとおしゃべりしたいみたいだからそちらに行ったらどうかしら?」
ーもうあなただけが私の支えではないのよ、あなたに依存したアリネットはいないの
侑里は少し傷ついた顔をした。
「僕は、君と仲良くしたいんだけどな…」
「ふふ、1人独占したら他の子たちからの視線が怖いから遠慮するわ。ほらあっちであなたにこういをもっているこたちがたくさん待っているわよ?」
明確な拒絶、アリアと侑里の間に一本線を引かれたようにその距離は遠い。
「…僕は諦めないよ…」
そう言って侑里はその場を去った。
小さく呟いた言葉はアリアに届いていた。
しかし彼女の心には何も響かない。もしかしたら前世のことを覚えている?とふと思ったが私には関係ないと切り替えた。
ーー私は幸せになりたい。それはあなたと一緒にではないのよ。
初対面の時から数年経ち、アリアは17歳になった。アリアはほぼ完璧なお嬢様といっても過言ではないだろう。成績優秀、文武両道、才色兼備とは彼女のことを指すのだろうと周りの人間は彼女をそう評価した。しかし、人間関係においては幼少期と変わらず一線を引いて付き合っているのは変わらない。前世のトラウマは根強いのか、なかなか他人に自分を見せることはしなかった。だが、一度身内に入れた人間には愛情深く付き合うのであった。そんなアリアにも家族以外にも身内のように付き合う人間は少数ではあるがいる。その中には親友と…
「アリアさん、今度の休み一緒に出かけませんか?」
「如月さん、申し訳ないけど予定が入っているの。ごめんなさいね。」
侑里はこの数年何度もアリアにアプローチをかけていたが、その効果は全くなく彼の立ち位置は初対面から変わらない。むしろ何度も断っても諦めず食い下がる侑里にアリアは辟易していた。
「如月さん、何度も言うようだけどあなたと親しくするつもりはないのよ。他の子といってちょうだい。」
「僕はアリアさんと仲良くしたいんです。諦められないし、諦めるつもりもないよ。」
「ふふ、しつこい男は嫌われるわよ?」
「…あの時僕は君を信じきれず裏切ってしまった。とても後悔した、謝って許されることではないとは思っているけど、今度は間違えたくない。だから次会うときは君だけを大事にしようと決めていたんだ。君だけが僕にとって唯一の人だ。」
侑里は前世のユリウスであった記憶を持っていることを隠さなくなっていた。アリアにも記憶があるとこの数年の付き合いで感じ取っていたのだ。
「ふふ、何のことやら。でも如月さん、私にとって唯一の人はあなたとは限らないんじゃないかしら?」
「…それは、他に君が想うヤツがいるってこと?」
そろそろこの長い年月やりとりしていたことから解放されてもいいはずだとアリアは思っていた。
「アリア!」
2人の間に男の声が割り込んできた。侑里よりも身長も高く、一言で言えばオーラがあり、圧倒的存在感をもつ青年がアリアの前に駆け寄ってきてそのままガバッと抱擁をする。
「会いたかったよ!やっと帰ってこれたよ!愛しいマイハート!」
「アレン!びっくりしたわ!いきなりなんだもの。でも帰ってきてくれて嬉しいわ。お帰りなさい。」
「ああ!生アリアだ!画面越しでしか会えなくてほんとさみしかったよ…でもこれからはずっと一緒だ!」
侑里は突然割り込まれたことに驚いていたが、自分が今世において一度も見たことのないアリアの本当の笑顔を彼に見せていたことに衝撃を受けていた。
「…アリアさん?彼は…」
熱い抱擁は終わらない、アリアは抱きしめられたまま顔だけ侑里の方に向けて言った。
「彼が、アレンが私の今世における唯一の人よ。」
「今世?アリアと僕は来世も、その先もずっと未来永劫アリアにとってのただ1人の男だよ!」
「ふふ、アレンったらもう。」
「…」
侑里は衝撃が強くて反応が返せない。
「前世では僕が迷いに迷ってしまってアリアの前行くことはできなかったみたいだけど、今は僕の隣にずっといる!もう離さないよ!」
アリアはアレンからの愛の言葉を当たり前のように受けとめる。
長年アレンはアリア一筋で他の女性にも目をくれず想ってくれていた。
最初は信じることができなかったアリアの心をゆっくりとほぐしていった。前世のことも話しても頭がおかしいなんて思わず、
ーー僕が近くにいてあげたかった、そばにいなくてごめんよ
と言って泣いてアリアを優しく抱きしめていた。
そんな姿を見て、信じてもいいのかもしれないと、アリアはアレンを心の境界線の内側に入れた。アリアは少しずつ前世の後悔、辛い気持ちを昇華していき、アレンと共に前を向いて生きていく事を決めた。大切な人達と共に生きていく、そこには過去の負の財産はいらない。侑里はもういらないーー
侑里は自分が入り込めない2人の世界を見て、自分がかつて掴んでいた幸せな過去の姿を思い出していた。でも、自分から離してしまった、周りの言葉に惑わされ本当のことを見えずにいた愚かな自分。いくら手を伸ばしてももう届くはずもない幸せ。あの時彼女を信じていれば手に入るはずだったのに、でも後悔しても無くしてしまった信頼は、生まれ変わっても手に入れることはできなかった。侑里は過去に囚われたまま、ただただ立ち尽くして2人の姿を見るしかなかった。彼の足元にはマリーゴールドが咲いていた。
マリーゴールドの花言葉
「嫉妬」「絶望」「悲しみ」
後悔して報われない男を書きたかった。
マリーゴールドは生まれ変わってもきっと人間ではなく小蝿か何かだと思う。
アレンは外国の御曹司でアリアだけを愛する重めな男。重いくらい思われてアリアは幸せに暮らすことでしょう。来世もきっとアリアにくっついて離れない。
侑里はアリアのことを心のどこかで想いながら、違う道を歩む事になるでしょう。いつか彼のことを想ってくれる人に出会えるまで、アリアのことを後悔して真っ当に生きてくれ。
はじめての投稿を読んでいただきありがとうございました。