00.プロローグ
面白いのか自信がありません。
あまりにも伸びなかった場合諦めます。ご了承ください。
彼は澄み切った青い空の下、屋上の上に立ち、街を見渡していた。
二年と少し、通い慣れた高校であるが、こうして高いところから街を一望したことはなかった。
しかし見渡してみれば、だいたいのものは見覚えがある。
一番に見えるのはモノレール、そして大学や別の高校もあり、大きな公園もあった。
その中でも特に目立つのは、宙に浮く巨大な卵型の“何か”だろう。
宇宙から来た何か、という意見が大多数だったが、アレが何なのか結局のところはわからずじまいだ。
奇妙かつ不気味な存在だったが、もう今となっては街のオブジェの一つとしてすっかり見慣れてしまっていた。
今後もアレが何なのか解明されることはないだろう。少なくとも人間の手によって解明されることは。
この日、世界は滅んだのだ。
神の手によって。
もっとも彼は神の存在など信じていない。彼に言わせれば、この世界を滅ぼしたのは神を自称する、人類を超越した何かである。
ただし、人類を超越した存在を神だと定義づけるなら、きっとそれは神なのだろう。
神は人間に試練を与えた、と言うには、今起きていることはあまりにも悪趣味だ。自称神が人間を使ったゲームを始めた、と言う方がよほどしっくりくる。
その結果として、見慣れた街だというのに、そこは以前とは全く違う場所に変貌してしまっていた。
道で人が血を流して倒れていた。
その人が生きているかどうかもわからず、誰も、彼を含めて誰も通報したり、駆け寄ったりはしない。
そもそも道に人はいなかった。少なくとも大手を振って歩いている人間は。
だが人影はあった。
ただしそれは人ではない。
サイズは小学生の低学年と高学年の間くらい、ぼろ布を纏っており、手には小さいながらナイフや棍棒など、人を殺すことが可能な凶器を持っている。そして全身は緑色で、耳が長く尖っていた。
それはファンタジー世界では定番のゴブリンだ。
ファンタジー世界の住人が、現代の日本を我が物顔で歩いている。
ゴブリンが何匹も半裸の女性に覆いかぶさっていた。
ゴブリンが男も女も生きたまま食っていた。
ゴブリンが人間の死体やその一部を引きずっていた。
ゴブリンが人間を探して歩きまわっていた。
ゴブリンが、ゴブリンが、ゴブリンが、ゴブリンが、ゴブリンが、ゴブリンが、街のいたるところにいた。
それだけではなかった。
どこからか火の手が上がっている。一つではなく、いくつも。
遠くを見れば、空を飛ぶ巨大な化物さえ見えた。
人が死んでいる。化物がいる。街が燃えている。
こうして世界は崩壊したのだ。
その場には彼の姿しかないのだが、彼に語り掛ける声があった。
「楽しそうだねぇ」
その声はまるで子どものようで、「楽しそう」と言うその声自体が愉悦に満ちていた。
彼はその声に応える。
「楽しいさ。もう世界に合わせて自分を削らなくていいんだから」
彼は混沌が支配したこの街で、澄み切った空に似合う笑顔でそう言った。