転生しちゃいました。
「―――っ、ぁ」
その家に入ると耳を劈くような悲鳴をきいた。
それは皆に聞こえているようでその家の住人たちはとても顔色が悪かった。
クロエ・イザベル・ヴァランタン、10歳。
私はその悲鳴を聞いた途端、くらり、と倒れてしまった。
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私、黒柳 萌花ことクロエちゃん。18歳。メイドカフェで働いています。
アイドルやアニメがだいすきで、ずっとメイドさんになりたかったので働けて幸せです。
勿論ゲームも大好きで、一番好きなのは乙女ゲーム「恋愛×ホラー!?ドキドキ☆マジカル」。
この作品は少し怖い逸話や伝承などをモチーフとしていて選択肢を間違えると恋愛シーンから急激なホラー展開が巻き起こるゲームです。クソゲーとしてオタクには嫌われていますが、わたしはだいすき。
なんていったてメイン攻略キャラの第二王子ユリス・オリヴィエ・コールリアが格好良くて仕方ないのです。攻略するとヒロインにベタ惚れなメロメロヤンデレキャラです。ただこのルートはメインルートなのにライバルキャラからの邪魔がけた違いに入り、最初クリアするのに数か月かかりました。
今日もそんなユリス様のことをお店に来てくれたご主人様たちとお話ししているとグワン、と体が揺れました。近くにいた先輩メイドの悲鳴が聞こえます。ご主人様たちが慌て、心配した様子で私を見ています。ああ、ごめんなさい、大丈夫です、っていいたくてももう声が出ないーーーー。ご主人様の姿を最後にそのまま私は意識を失いました。
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「----ッ、うぅ」
目が覚めるとそこは自分の部屋でした。
私が好きなティファニーブルーを基調とした白とブルーで揃えられた部屋。
……ん?てぃふぁにーぶるー?
知っているけれど初めて知ったような単語の響きに疑問を抱くと一つ、また一つと疑問があふれ出てしまいました。あれ、こんな豪華な部屋で私はなんで寝ているのだろう、たしかさっきまでメイドカフェで働いていて、それで倒れてしまって、と思い出してみますがどうしてもここにいる理由がわからない。
とりあえず、ベッドからでることにしました。近くに姿見があったのでちらり、と姿見を見るとそこには黒柳萌花ではない、10歳くらいの女の子がいました。腰元まで伸びる金髪のふんわりとしたお姫様みたいなきれいな髪。ヒスイ色の瞳にびっしりと長い金色の睫毛。白を基調としたふわふわとして着心地がいい品のいい寝巻。真っ白で透けてしまうのかと思うほどの肌にすらりと伸びた両足-----。そう、これは幼いけれど、この姿はーーーー、
「あ、あああ、あ、悪役令嬢のクロエ・イザベル・ヴァランタンだあああああッ」