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告白の代償が大き過ぎる

 笛重さんの言う通り、十人十色人それぞれだ。


 どうして満面の笑みをして大嫌いだと言われなければいけないのか。

 笛重さんだからこそ出した答えなのだろう。

 それを理解する事など俺には到底出来なかった。


「あ、あはは……」


 満面の笑みにつられて苦笑いをしてしまう。

 笛重さんはその表情のまま外の方を見やってしまう。


 未だ観覧車の頂上を折り返した所。

 先程までと同じ静寂だというのに、空気の重さが違う。


 いつもは少しでも長く笛重さんと一緒に居たいと思っているのに、今はいち早くこの場から離れたいと強く思う。


 悲しい辛い。


 その感情が心の底から溢れてきた。

 それにより目頭がじわじわと熱くなっていき、頬を涙が伝っていた。


「………」


 悔しかった。


 恋人は無理でも友達にはなれた。なら、いつかは恋人にもなれてしまうのではないか。

 それを疑わなかった。なれると思ってしまっていた。


 笛重さんから目線を外し、彼女とは反対側の外を見る。


 男として泣いているところを悟られたくなかった。

 嫌われてしまったとはいえ、俺はまだ彼女に良く見られたいと思っているのだ。


 諦め切れない。


 諦めたくない。


 でも、涙は止まらないし口も動かない。

 俺には今の状況を突破する手立てを講じることが出来ない。


 観覧車が一周し終わるのを待つ事しか出来なかった。






 最近、自分が男であった事を忘れかける事が多々ある。


 女に転生してから既に十六年経っている。男として生きていた期間と大差がない程に。


 だからといって、異性を受け入れる気には何故かなれない。


 今までは、私にそれを求めてきた輩を簡単にあしらえば直ぐに消えてくれた。

 それで良かったのだ。誰かに好かれる事は少し良い気分でもあったから。


 それでも、浅原 修は中々消えなかった。


 彼のストレートに気持ちを伝えてくるストーカーを思わせる告白をあしらう事が出来なかったからか。

 付き合えないなら友達から。そんなもの、既に縁の無いものだと言うのに彼は諦めなかった。


 私も男だったんだ、彼の気持ちが分からない訳がない。


 私は好きな人を前に告白なんて出来る柄じゃなかったけど、彼にとって告白とは何ら難しくない事なのかもしれない。

 だけども、それで断られるのは本当に心が痛むものだろう。


 告白した事によって好きな人に嫌われてしまう事に。


 大っ嫌い……か。


「………」


 何で彼の気持ちを知りながら、そんな酷いことを言ってしまったのだろうか。

 もし、自分がそんな事を言われたら。


 頬を涙が伝っていた。


 夕陽に目が眩んだ訳ではなく、私自身への怒りに心の底から溢れていた。






 日は沈んだ。


 あれから、観覧車は何事もなく俺たちを降ろし、彼女は傑先輩に連絡を取り帰ってしまった。


 俺は一人、家族へのお土産を適当に買って帰路に着いた。

 お土産など買う気分では毛頭なかったが、ああだこうだ言われるのが面倒だと思い仕方なく買った。


 そして今、帰宅してシャワーを浴びている。


 既に日付は変わっているが、眠れる気にはなれなかった。


「あー、明日からどうなるんだろ……」


 トラウマのように焼き付けられた彼女の満面の笑みが、脳裏にずっと浮かぶ。

 明日、笛重さんはいつも通りの顔をしているのだろうか。


「………」


 考えると頭が痛くなってくる。


 スペックの低い自分の頭にイラつきを覚えながら、シャワーを止めた。


 考えに考えていたせいでお腹が空いたので、夜食にインスタントラーメンを作る。


 あれだけ走ってあんな事言われて肉体的にも精神的にも参っている筈だというのに、それを平らげても睡魔に襲われる事はなかった。


 付け足せば、昨日も彼女に遊園地で会えると緊張してロクに眠れなかった気がする。


 徹夜など滅多にした事がない為、いつまで起きていられるのかもわからない。

 いつか、限界が来てぶっ倒れるまで俺は眠れる気がしなかった。



 そして、日は登る。

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