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友達は格好つけたい

 お怒りになられた佐西先生によって追い出され、仕方なく教室に向かっている道中。


「怖かった。先生あんな顔するんだな」


 知ってはいけない一面を知ってしまったこの感覚を横を歩いている宮村に共感して貰おうとした。


「佐西ちゃんのああいう面、結構レアだからな。見た事なくても仕方ない」

「知ってたのか」


 宮村は佐西ちゃんファンクラブ会員なら当たり前という感じで俺の無知さを鼻で笑ってきた。そこから、先程の怒り狂った様を見る事は出来なかった。


「もう、怒ってないのか?」

「……佐西ちゃんのあれは、最終通告だ。その先は……お前も知ってるだろ?」


 宮村は俺の問い掛けに対して深刻そうに口にし、反対に問い掛けてきた。


「集団暴行の事か?」


 先ほど俺の思考の中にも出てきたそれに宮村は軽く頷いた。


 これ以上、佐西先生への詮索は止めよう。背後にある闇の怒りを買わないように。


「そうだ、宮村」


 なので俺は話を切り替える。佐西先生のせいで忘れかけていたが、笛重さんとの関係をどうにかしたいと考えていたのだった。


「お前、笛重さんと昔からの知り合いだったよな」

「ああ、幼稚園からな。なんだ修、情報集めか?」

「そんなところだ」


 この男、宮村 正樹とは高校に入学してからの仲である。偶々、席が近くだったので話してみると意気投合。


 そして何より笛重さんの事を昔から知っているという。俺にとって、こんなに頼もしい友達は初めてである。


「情報っつっても無いぞ。あるとしたら……昔は良く男子グループに混ざって遊んでいたぐらいで」

「え、あの笛重さんが?」


 一瞬思考が停止する。男に百パーセント冷酷な目を向ける笛重さんがだと?


「まあ、あれくらいの時期なら珍しくないだろ。ただ女子とは遊んでいなかったな、海鳴を除いて」

「……わからん」


 唐崎は笛重さんと家が近くだからという理由で仲が良かったのだろう。でも、それ以外の女子とは遊ばずに男子と遊んでいた?

 俺の理解不能に陥った頭は今にも張り裂けそうである。


「そういう情報じゃなくて、好きな食べ物とか、スポーツとか、いつも読んでる本の事とかだよ」


 俺は情報の主旨を理解させようとするが、ため息を吐かれてしまう。


「小学生かよ」

「アホで悪かったな……」


 いつもの流れである。こいつと友達になってから今まで、俺はアホ扱いしかされてこなかった。何か失言をすれば罵られる。そういう関係なんだ俺たちは。


「そうだな、アホであるお前に手を差し伸べられるのは俺ぐらいか……」

「み、宮村……」


 急に目を細めて遥か彼方に視線を移し格好つけている宮村。若干引いてしまうが、俺のために痛い存在でいようと決意したんだ。それを否定しては友の名が泣いてしまう。


「こういう時大切なのは、共通の何かを持つ事だ。それが二人を引き合わせてくれる」

「それぐらいわかってる。その何かが無いんじゃないか」


 俺は彼女の事を知らなさ過ぎる。本性を微塵も見せようとしない彼女なので、情報網に引っかかるのは嘘が九割。週一告白されているというのもデマ情報だろうし。


 なので、どれが本当の情報か判別するのは難しい。


「まあ、任せろ」

「わかった」


 親指を立てて歯を輝かせている宮村。その自信はどこから来るものなのか。仕方なく、不安を友の名で押し潰して任せる事にした。






「お、海鳴」


 教室に着いて早々、宮村は唐崎に声を掛けた。

 声を掛けたのは宮村の筈なのに唐崎は俺を睨みつけてくる。


 唐崎は面倒臭そうに宮村に視線を移すと、これまた面倒臭そうに聞いた。


「何の用、正樹?」

「指導楽しかったか?」

「……楽しいわけない」


 どうやら俺を気絶させた件で指導を受けていたようで、非常に不機嫌な唐崎は再び俺を睨んでくる。


「それで本題なんだが……」

「ん?からかいに来たんじゃないの?」


 無視に近い扱いを受けている宮村は格好つけて言う。


「俺と付き合ってくれないか?」


 俺の頭は見事に破裂した。

 何故、宮村は唐崎に告白しているのか。


 唐崎も同様で思考回路がショート……


「死ね…」

「ぐぶぉ!!」


 する事は無く、宮村の顔面を思い切りぶん殴っていた。

 宮村はあまりの剛腕より放たれた突きによって膝をついてしまう。


「な、何するんだ海鳴!」

「やっぱ、からかい来たんじゃん!」

「何言ってんだ!好きだ海…」


 側から見ると痴話喧嘩なそれは、今さっきまで指導を受けていた唐崎の回し蹴りにより幕を閉じた。






「いってぇー……」

「アホだな」


 昼休憩の合図が鳴り弁当を広げて食べていると、首をさすりながら宮村がやってきた。


「お前、何がしたかったんだ?」


 前の席に座ると流れる様に俺の弁当をつまみ食いする男に疑問を投げかけた。


「何って修の為に、共通の何かを作ってあげようとしたんじゃないか」

「どこがだよ。ただ、唐崎に告っただけだろ」

「これだからアホは……俺と海鳴が付き合えば、お前と森島の親友同士が付き合っているという共通の話題が出来るだろ」


 こじつけも良いところである。ここで俺は完全に利用された事に気づいた。


「俺の為という建前で意中の相手に告白しただけだろ……」


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