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保健室の人気者先生

 真っ白な世界に隔離されていると驚く。白い天井、白いカーテン、白いベッド、白い枕、白い掛け布団……何度か来たことのある保健室である。


 おおよそ一時間後に俺は目を覚ました。


「……」


 室内は静寂に包まれており誰の気配もしない。

 授業受けるのが面倒臭いので気絶している事にして思考を巡らせる。


 果たしてこれから大丈夫なのか。唐崎という邪魔者が特に強敵だ。

 幼馴染だからと言っていつもいつも笛重さんに付きまとっている。それでいて笛重さんに近づこうとしたらこのザマだ。

 泡吹いて気絶した事なんて初めてだ。笛重さんに惨めな姿を見られてしまっただろうな。


 無い頭で考えていると、それを遮る様に物音が室内に響いた。


「……いてて」


 起き上がりカーテンを開けると、その音の正体は床に尻餅をついていた。


「先生?」

「お、おはよう!浅原くん!」


 声を掛けると、白衣を着た佐西先生は慌てた様に甲高い声で返事をしてきた。


 辺りをよく見てみると椅子が倒れており、佐西先生の口からヨダレが垂れているのが伺えた。


「先生、寝てました?」


 俺が目覚めた時何の存在も感じなかったのはそのせいだろう。


「な、何を言っているのかな?君こそ寝たふりとかしてたんじゃない?」


 くっ、言い返せない。

 俺も先生も同罪……いや、先生は勤務中ですよね。


「この事は内緒にしておきましょう、先生」

「ひっ!弱味を握られた!?」


 お互い様という意味で言ったつもりなのだが、佐西先生は涙目で後ずさる。


 華奢で小柄、更に色白で弱々しい佐西先生は学校の人気者である。なので、俺もついつい顔が赤くさせて惚れてしまう。


 ただ、その感情は持ってはいけないものだと放り捨てる。

 生徒と先生、その禁断な関係。


 そのことを言っているのではない。


 男である俺とオトコの娘である佐西先生がその様な関係になってはいけないということだ。


「なぜ、先生は男なのですか……」


 何故、こんなにも可愛いのに男なのか。俺はそのことで何度眠れない夜を過ごしたか。


「き、君……おいたはいけないよ!?」

「しないですよ!」


 俺の永遠の疑問にボロボロと涙を流し始めてしまった。


 俺は慌てふためき、こういう時は背中をさするものだろうと親切心で近づく。

 それに対して佐西先生は抵抗した。可愛く手足をバタバタと。


「落ち着いて下さい。さあ、俺を信じて」

「し、信じられません!!話によると女性に執拗に声を掛けていたとか!!」


 誰から聞いたんだそれ。声を掛けるというか、友達として話をしていただけなのですが?


 そして先生、俺を殴ったり蹴ったりするのやめてもらえませんか?


「失礼しまー……す」

「あっ」


 背中をさすってあげようと苦戦していると扉が開かれ見知った男が入ってきて、俺とそいつは直ぐに目が合う。

 沈黙を纏って数秒が流れる。


「助けてー!!」


 それを、佐西先生の悲鳴がぶち壊した。


「お、修!!テメェ何やってんだ!?」

「やってない、まだ何もやってない」

「まだって事はこれからやるつもりだったんだな!?」

「言葉の綾だ宮村。俺を心配して来てくれたんだろう?」

「だ、誰がテメェの心配なんてするか犯罪者!!」


 駄目だ。宮村は完全にキレている。

 学校の人気者の佐西先生に手を出そうとしたと勘違いされたんだ、仕方がない。


 入学早々、手を出そうとした新入生が集団暴行にあったって話も聞いた事がある……あら、俺って今やばい状況なんじゃ。


「誤解だ宮村!俺は笛重さんが好きなんだぞ!先生になんて興味ないよ!!」

「……そうだったな、修」


 そうさ、俺の笛重さんへの思いに偽りはない。それを友達である宮村に訴え掛ければ何とかなる。


「……だが」

「えっと、この話はやめにしないか宮村」


 宮村の一言から嫌な予感がビシビシ感じられてしまう。その先を言わせまいと遮るが無駄であった。


「だが!佐西ちゃんに興味がないとは聞き捨てならねぇ!!」

「失言だ、もう許してくれ……」


 もう止められない。嗚呼、これから俺は集団暴行という地獄に身を焼き殺されるのか。


「宮村くん……」

「は、はい」


 諦めたその時、佐西先生により宮村は止まった。


「浅原くんを連れて出て行ってくれ。じゃないと警察呼ぶよ?」

「………は、はい!」


 いつしか佐西先生は泣き止んでおり、スマホを手に持っていた。その画面には『110』と映し出されてもいた。


 あの弱々しい佐西先生が勇敢にも変態宮村に立ち向かっていた。


 しかし、俺は恐怖を覚えた。いつも先生のドジっ子の様な目付きは、まるで笛重さんがいつもしている様な冷酷さを感じさせたからだ。

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