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宮村と森島の昔話2

 あの日は何てことのない平日だった。


 お天道様はギンギンに校庭を照らし陽炎が発生し、各自が持参する水筒のサイズが一月前のふたまわりは大きくなるぐらい暑かった夏休み目前の日。


 そんな中、もうろうとする意識で算数の授業を受けていると森島が突然倒れた。


 一限前に行った水泳は脱水を感じにくく、十分に水分補給をしなければならない。エアコンは設備されていない熱気が充満する教室に入れば嫌でも水分補給をしたくなる。


 彼女に限ってそれを怠ることはない。


 しかし倒れた理由は至って簡単で、単に疲労が限界に達しただけ。毎日のように外で遊びまくり、夜もロクに寝ず夜更かしをしていると言っていた。



「大丈夫かー?」


 昼休みに保健室に立ち寄ってみるとベッドに横たわる森島の姿があった。


「……ぁ」


 悪夢でも見ているのか森島は苦しそうにもがく。

 その様を見て気付けば森島の額に手を伸ばして体温を確かめていた。


「酷い熱だな」


 その体温を感じ取った瞬間に自分の行為がいくら幼馴染みといえど良くない事だと感じ手を引いた。


 森島の額の感触が残る手の平をぼーっと見ていると、微かに目を開いた彼女に一歩引いてしまう。


 今の行為がバレてしまったのではないか、そんな不安からだった。

 しかし下心があった訳ではなく心配だっただけで話せば分かってくれるだろうと良い感じの言い訳を探していると、森島は唇を震わせる。


「……ない………しにたく……ない……」


 そして弱々しく上げた腕を俺の方に伸ばしてくる。


「笛重?」


 その手を取って軽く握ってやると全身が震えているのが伝わってきた。死の恐怖、不安。それらの感情を抱くほどに体調が悪いのだろう。


「せんせ……おねがい……助けて……くれ」


 俺を宮村とは認識できずに再び目を瞑ってしまう。

 震えはどんどんと大きくなっていき、ついにはボロボロと大粒の涙を流していた。


 こんなにも弱っている森島を見たのは初めてだった。彼女の弱音なんて今まで一度たりとも耳にしたことはなかった。


「……笛重」


 完璧すぎる森島が大好きだった俺は、その苦しむ姿を見て感情が制御出来なくなっていた。


 常に俺の上に立っていた森島が、今は俺に助けを求めている。


 こんな無防備な状態で。


 先ほど同様に気がつけば森島の顔と俺の顔の距離は今までのどんな時よりも近づいていた。

 これは心配だったからではない、酷い下心からだ。


 俺は森島笛重に口づけをした。

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