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宮村と森島の昔話1

 今でも忘れることはない。


 立ち上がり歩き回れるようになってから間もなく。何となく言語も理解出来るようになった頃に彼女と出会った。


「近くに越してきた宮村です」

「どうも、森島ですー」


 引っ越しを終えて母と挨拶をして回っていた時。


「こんにちは」


 母に隠れていた俺を覗き込むように彼女は現れた。

 その一言の挨拶からは幼さを感じさせずに違和感しか湧かなかった。


「こにちは…」


 拙い挨拶で返した俺は少しばかり恥ずかしさを覚えてしまった。


「へぇー、うちの子と同い年じゃない」

「そうなんですか?良かったね正樹」

「隣の唐崎さん家にも女の子がいるのよー」


 話で盛り上がっている母親達はまだ長くなりそうだと仕方なく彼女に視線を合わせた。


「私は笛重、よろしくね」

「うん」


 笑顔の彼女は今まで会った誰よりも可愛いと思った。






 森島と海鳴と一緒にいるのが当たり前になっていた小学二年生の頃。


「えーー、笛重またアイツらと遊ぶのー!?」


 海鳴が悲鳴を上げていた。

 森島と遊びたがっていた海鳴だったが、毎日のように外でサッカーや鬼ごっこ等を俺を含めた男子達と遊んでしまう森島に不満をぶちまけてしまう。


「でも海鳴だっていつも楽しそうに遊んでいるじゃない」


 無論、笛重と遊ぶためにその輪の中に飛び込んでくる海鳴だった。


「楽しいけど、笛重と二人で遊びたいのー!」


 泣きべそをかく海鳴に困ったように俺の方を見てくる森島は両手を合わせて謝る。


「いいよ、謝らなくて笛重」


 やったーという笑顔を浮かべる海鳴と森島に別れを告げて俺は一人で遊びに向かった。


 けれどその日は、大して楽しいと感じることが出来なかった。






 それからも月日は流れた。


「笛重、今日も遊ぼうぜ」

「うーん、今日は海鳴と約束してるから。ごめんね正樹」


 小学三年生には似合わない小説を両手で挟んでまた謝ってくる。片目ウィンクで舌を少しだけ出して。


「謝るぐらいなら俺もその遊びに混ぜろよ」


 その時の俺は森島笛重が大好きだった。


 本当は初めて会った時からそういった気持ちがあったのかもしれない。可愛くて、誰よりも頭が良くて、一緒にいたら楽しい。


 だから俺は一秒でも長く森島と一緒にいたかった。



「笛重!待ってた……って、なんで正樹がいるのよ!!」


 それから海鳴の家に遊びに行くと、当然海鳴が発狂した。


「うるせーな、別に俺が居たって良いだろ?」

「べ、別にいいけど」


 海鳴の部屋には何度も入ったことがあったし、海鳴とは仲が悪い訳でもなかった。


「それじゃあ、今日もあれやる?」

「え!?あ、いや……今日は……その」

「……ん?」


 森島が笑顔で提案すると海鳴は赤面しながらショートしてしまう。


「うーん、じゃあ魔法少女ウミ……」

「あああ!!!」


 そして再び発狂してしまう海鳴。やはりこの場に俺が居てはまずいと気付き、帰ろうとすると。


「ままごとってやつ……やろう笛重」


 瀕死の海鳴が血反吐を吐きながらそう言った。


 おままごとは幼稚園児の時、この三人で良くやっていた。それにしても小学三年生でもおままごとをやるんだなと思った。


「それじゃあ、私と正樹がお母さんとお父さん、海鳴は娘ね」

「……うん、それでいいよ」


 どこか不満げな海鳴とニコニコの森島に手を取られて帰れなくなり、おままごと強制的にやらされるハメになった。


「ねえ、あなた。ご飯にします?それともお風呂?」

「え?何?もう始まってるの?」


 開始の合図もなく突然始まったおままごとだったが、今までやっていたものとは別物だったと後になって気づく。


「お風呂ね!あなた!それなら海鳴と入ってね」


 森島は俺の話も聞かず、勝手に話を進めて更に海鳴を押し付けてきた。

 俺と海鳴の体は服越しだが密着してしまう。


「おおおお、お母さん!?」


 数秒経って既に赤面している顔を赤面させて、細腕で俺を突き飛ばしてしまう海鳴。突き飛ばされた俺は壁に頭を撃って意識がなくなってしまった。


 こうして久しぶりのおままごとは十秒程度で幕を閉じた。






 そんな事もあって割と楽しく森島との関係は続いていた。



 小学四年生のあの日までは。

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