The World's Brightest YouTuber
『082 アルミホイルを叩いて鉄球にしたら大変なことに……!!』
「みなさんこんにちは! 今日は最近話題の、これ! アルミホイルを丸めて叩いて、鉄球にしてみようと思います!」
「輝けるユーチューバーの私にピッタリですね!」
(キラーンという効果音)
「さて材料はこちら! 大量のアルミホイルと、トンカチです!」
『Mission: アルミ球』
「まずはこうして、アルミホイルを丸めていきます……」
(アルミホイルをクシャクシャに丸める)
「そして、こう!」
(アルミホイルをトンカチで叩く)
「こうすると、アルミホイルが圧縮されて隙間が埋められていくんですよ~。中学校で延性と展性という言葉を習ったのを覚えてる人もいるでしょうね~」
(話しながらアルミホイルを叩き続ける)
「見てください、だいぶ小さくなりました! この調子でアルミホイルをどんどん固めていくんです!」
(アルミホイルを塊の周囲に何周も巻き、またハンマーで叩く)
「このまま好きな大きさまで続けます!」
(ペッポーという効果音)
『数時間後』
「……よーし、ひとまずこれでどうでしょう! 見てください、この金属光沢!」
(キラーンという効果音)
(直径十数センチメートルのアルミ球をカメラの前に持ってくる)
「さて、これはアルミ球ですが……これからこれを鉄球にしていきます!」
「まさに錬金術! ですね! 錬金術師ユーチューバーです!」
(ドドンという効果音)
『錬金術入門』
「やっぱりですね、金属原子を作るとなったらこれ! 太陽!」
(青空と太陽の写真)
「恒星の内部では、高温と高圧によって水素やヘリウムが核融合を起こし、最終的に鉄にまでなるんです! 詳細はこちら!」
『https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%92%E6%98%9F%E5%86%85%E5%85%83%E7%B4%A0%E5%90%88%E6%88%90』
「これ利用できそうだと思いませんか? 核融合が鉄より先に進まなくなるのも高ポイント! やりすぎる心配がないということですね!」
「ひとまず太陽を目標にしてみましょうか。このアルミ球から太陽を作って冷まして外側を削れば、鉄球が取り出せるはずです!」
『Mission: 太陽』
「太陽の中心温度はなんと、1500万度! すごいですね! 広い部屋でやらないと、壁が自然発火して火事になっちゃうかも!」
「そして中心の圧力は……約2京パスカル! 気圧にして約20兆気圧です! すごーい!」
『20兆気圧 欲しい!』
「高圧にすれば自然と温度も上がると思うので、今回は圧力だけしっかりかけていきましょう! 握力にはちょっと自信がありますからね! ではいきます!」
「ぬ゛ん゛っっ!!!!」
『ぬ゛ん゛っっ!!!!』
(歯を食い縛り、胸の前で両手で持ったアルミ球に力をかける)
『⏩5倍速』
(力をかけている映像が早送りされる。)
「ぬ゛ぅ~、見てください!」
(チーンという効果音)
『変化なし』
「ダメです!」
(ドヤ顔アップ)
(ペッポーという効果音)
『数ヵ月後』
「こういうことは、やっぱりプロにお任せするのが一番です! というわけで私は今、某国の軍事施設の実験場に来ています!」
(実験場の様子が映される。見渡す限りの荒野。遠くに塔が立っているのが微かに見える)
「すごいですね! やっぱり大国はこうでーーおっと」
(慌ててマイクと反対の手で口を塞ぐ)
「それで、私、考えました。熱と圧力、両方欲しいならやっぱり爆弾! 核爆弾! インパクトが大事なんです!」
(バーンという効果音)
『衝撃』
「今日ここで行われる実験は、軍事研究の最先端のテクノロジーの実験! 今までに誰も実現できなかった破壊力への、飽くなき探求の最前線です! これは期待できますね!」
(操作盤とディスプレイの前で待機する軍服の外国人たち)
「じゃあいよいよ、爆発させてもらいましょうか! よろしくお願いします!」
(軍服の外国人のひとりがカメラに向かって親指を立て、外国語で何か言う。別の軍人がスイッチを操作し、ボタンを押し込む)
「やっとアルミホイル製の鉄球が完成します……ついに私も人気ユーチューバーの仲間入り!輝け私の太陽ーー」
(映像が乱れ、途切れる)
* * * * * * * *
(どこかの研究室と思わしき場所で語る学者)
「ーーこの日発生したマイクロブラックホールの蒸発によるガンマ線バーストこそが、博士の提唱した理論の裏付けとなりました。しかし、遠い昔この軍事実験が行われた遠い彼方の惑星では、実験の瞬間に文明は滅び、ブラックホールの消滅を観測する生命はもはや残っていなかったのです」
(スタジオの映像)
「長い時を経て我々は、ひとつの惑星の最後の瞬間を記録したデータを観測、復元し、滅びていなければ当時の人々が観ることになっていたであろう映像を再現することに成功しました。自らの手によって終末を招いた文明を見て、何を感じ、何を為すのか。世界の平和のために、私たち一人一人、何ができるのか考えるときが来ているのかもしれません」
(スタッフロールとともにテーマ曲が流れる)
『ドキュメンタリー宇宙世紀 031 遠い星の最期の声 終』
最後らへん科学的に無理矢理になってしまったのでくやしい。
しかしこれ以上考えても精密な話ができる気はしなかったのでこのまま投稿。