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魔女奇伝  作者: 夜風
1/1

 くすんだ空である。荒れた道を馬車が揺れている。乗り合いの馬車に人気はなく、御者、それにフードを深くかぶった人一人のみが乗っている。

「しかしお客さん、どうしてこんな時期に西都に行くんだい」

唯一の客は御者に目をやった。

「少し用があるのです。何かあったのですか?」

「西都の手前の町で魔女が見つかったらしい。処刑するのか王城の地下牢に入れるのかは知らないが、まあえらい騒ぎさそのあたりは」

「へえ、そうなのですか。魔女とは。また」

小石が多いせいか、ガタン、と荷台が揺れる。

「魔女は見つけ次第殺さにゃならん。そうしないとあれだ、周りに厄災を振りまくってやつだ。だから黒や茶色の髪をしてない人間は殺さにゃならん。」

御者台の上で男は言った。

「…厄災ねえ」

「なんだいお客さん。魔女が怖くないのかい。」

御者の男は驚いたように振り向き、荷台の人物を見た。

「別に…怖くはないですよ、奴らも人間です」

男は荷台のフードを目深に被った客を睨み、唸るように呟く。

「魔女は…あれは化け物だ。指先一つで雷を落として街を火の海にするんだぞ。」息を呑む。「あんたもまさか魔女か」

荷台の客ははらりとフードを払った。

「まさか、ただの旅人ですよ」

その髪は長く、そしてその髪は澄んだ黒であった。




「すまないねえ、さっきは疑って」

町の入り口で業者の男は申し訳なさそうに頭を掻いた。

「仕方ないですよ。こういうご時世ですから。町まで届けてもらって助かりました」

「西都はここから一日歩いたところにある。ここまでで申し訳ないが…」

「いや、十分ですよ。ありがとう」客は銀貨を二枚差し出した。

御者は銀貨を受け取りながら呟いた。

「しかしあんた女だったんだねえ、男とばかり思ってたよ」

女はフードを背中に落とし、小さく笑った。

「旅をしている時は顔を隠している方が気楽なんですよ」

「確かにな。だがここから先はフードは外した方がいい。魔女と取り違えられるぞ。」

黒髪の女は頷いた。




 空は灰に染まり、町は淀んでいる。これは魔女たちの物語。


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