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残酷のアクセルリス  作者: 星咲水輝
17話 ミスティク・イノセント
76/277

#? 慟哭する怨嗟

 暗黒の中。


(────ク。ク。ク。危ない所だった。が)


 プレゲーは生き永らえていた。何処までもしぶとい魔女である。


(ここは。誰の中か。いや。誰でも良い。誰にせよ。次はこの者に感染し。再び日の光を望む)


 昏い昏い精神の中、プレゲーは更に深くの闇を目指して沈んでいった。


(この者の深層心理を掌握し。水面下に。秘密裏に。この者を蝕む。それこそが我。プレゲーなり)


 直ぐに奥底へと辿り着く。深層心理の最下部。その本人ですら知り得ない、本能に最も近い部分。


(ここを鑑賞するのもまた楽しみの一つ。さて。この者はどのような本能を宿してい────)



『それ』を見たプレゲーは凍り付く。


(──なんだ。これは)


 何処までも邪悪な、赤と黒に塗れた悍ましい世界。

 プレゲーは逆に己の精神が蝕まれていく感覚を味わっていた。


(なんだ。なんだ。なんなんだこれは。これは!)


 虚空から大量の眼球が出現し、その全てが同時にプレゲーを睥睨する。


(やめろ。見るな。見るな! 私を見るな!)


 怯えるプレゲーの周囲に、赤黒い邪悪が渦巻いてゆく。


(なんなんだこれは……恐ろしい、悍ましい! こんなもの……この世に在ってはならない……!)


 邪悪がプレゲーを覆い、取り囲む。


(あ……あ……)


 そして、飲み込む。


「うわああああああああーーーーッ!!」




「…………あら」


 アイヤツバスは髪を掻き上げ、振り返る。


「お師匠サマ?」



 アクセルリスが心配げに振り返る。


「どうかしました? まだ何か残ってるとか?」

「……いいえ、なんでもないわ」

〈なら早く帰ろうぜ! オレももう腹ペコペコだ!〉

「何でトガネが?」

〈あるじのことが心配で心配で、気付いたらすっげー腹減ってた!〉

「あんた、そこまで私の事を……!」

〈……へへっ。ほら、創造主! 行こうぜ!〉

「……ええ、そうね」


 彼女たちは楽し気に並んで歩いて行った。



 心の中で、呟いた。


(貴女みたいな、ウィルスのように矮小な魔女が、私を飲もうなんて……笑っちゃうわね)


「……フフ」


 アイヤツバスは微笑んだ。

 その瞳の色は、未だ分からぬまま。



【ミスティク・イノセント おわり】

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