#4 兎狩り
【#4】
時は遡る。
暴走魔行列車から離脱したマーチヘア。
どこかの草原に着地し、線路の先を見やる。
すでに列車の影は無い。
「ふ──私の勝ちだな。明日のニュースが楽しみだ」
立ち去ろうと、後ろを向いた。
「な」
「ごきげんよう、マーチヘアさん」
「おま、お前は……!」
彼女の真後ろに居たのは黒コートの魔女。そのメガネの奥の眼光は冷酷に。
「アイヤツバス……!? どうして、ここに」
「どうして、って……自分が一番分かっているでしょう?」
「え?」
何もわからない、といった風の表情をしたマーチヘアの首をがしりと掴み、持ち上げる。
その腕は細く華奢だが、まるで万力の様な剛力でその首を締め上げる。
「……私の弟子に、何をしたか。知らないとは言わせないわよ?」
「え……あ……が……」
指が食い込む。喉が潰される。声が出せない。
「……覚悟はできてるわよね?」
「ぎ……あ……」
涙と冷や汗でびしょ濡れの顔を僅かに横に振る。
否定、及び命乞い。
だがもちろん、通らない。
「さよなら」
首を掴んだまま手首を直角に傾ける。
「あ」
ごきりと低い音が骨に伝わる。
「……」
手を離す。ぐたり倒れ落ちたマーチヘアを興味なさげに見下ろす。
「……まったく。人気過ぎて困っちゃうわね、アクセルリスってば」
マーチヘアの亡骸を蹴り飛ばし、知識の魔女は立ち去った。
「私が守ってあげないと、ね」
そう呟いて、静かに微笑んだ。
【仕組まれたクライシス おわり】