#3 凱歌
【誰が為の鎮魂歌 #3】
後日。残酷魔女本部。
「アクセルリス、ただいま参上しました」
アクセルリスを迎え入れたのはやはりシャーデンフロイデとアーカシャ。ミクロマクロもいるにはいるが、仮眠中。
「おっきたきた。怪我の方はもう大丈夫なの?」
「はい、もうバッチリ万全です!」
「何よりだ。では、先日の任務の話をしよう」
「……その件につきましては、私の未熟さ故、犯人であった外道魔女レキュイエムを仕留めることが出来ず、まことに……」
深々と頭を下げようとするも、アーカシャがその頭を掴んで礼することを許さない。
「あーあーあー、いい、いい、いいんだよそういうのしなくて」
「処分失敗など、ここでは珍しくもない事だ。あの状況から生還できただけ充分だ」
「そうなん……でしょうか」
「そういうものなの!」
「いずれにせよ、アイヤツバスには感謝しないとな」
「そうねー。たまたま現場近くを通りかかって、アクセルリスを助けて、そのままレキュイエムを処分しちゃうんだもんね」
「流石お師匠サマ……」
銀の眼を輝かせるアクセルリス。
「でも、アクセルリスの存在も不可欠だったよ?」
「え?そうですか? 今回私はいいとこなしで恥ずかしい限りなんですが……」
「お前があのタイミングでキリノ町に向かわなければ、レキュイエムを炙り出すことは出来なかっただろう」
「……言われてみれば、確かに……?」
「言い方は悪いけど、いい感じの囮として活躍したわけね」
「流石にそれは言い方悪すぎるだろう……」
「囮……!」
まんざらでもなさそうな顔。
「いいのか……」
「でへへぇ」
腑抜けきったアクセルリス。
「あー、一応厳しいことを言っておくと。今回は『偶然』アイヤツバスが居たから万事解決で終わったものの、もしあいつが居なかったら大惨事だったからな」
「あ……そうですね」
我に返るアクセルリス。
「二度とこのような奇跡は起きない。だからこそより一層成長し、確実に標的を屠る力を身に付けよ」
「分かりました。アクセルリス、より強くなり、あらゆる外道魔女を殺し、戦火の魔女をも殺して見せます」
緩んでいた銀の眼は普段の鋭さを取り戻す。
「そうだ。期待しているぞ」
「まあ、背負い込ま過ぎずに頑張ってね」
「はいっ!」
失敗の経験。それもまた踏み台として、残酷のアクセルリスは次の一歩を往くのだ。
【誰が為の鎮魂歌 おわり】