#? 勅令の裏
【勅令の裏】
「……うん、うん。美味しいね!」
「コシが、よい」
「んんん~200歳くらい若返りそうね」
魔女機関本部クリファトレシカ99階、邪悪魔女会議室。
彼女らはパーティーメイカーズ。
表向きの任務は夜会での食事を決めること。
今日も張り切って励んでいたようだ。
「どう?」
「わたしはいいと思う。予想外の食感がたまらない」
「私も賛成よ。ぜひ皆が食べたときの反応が見てみたいわ」
「えへへ、やった!」
とまあ、今日も平穏に任務が行われていた。
◆
食事を終え、まどろんでいた三人。
「……」
そろそろか、とカイトラが口を開こうとした瞬間。
会議室の扉が豪快に開かれる。
三人同時に介入者を見やる。
パーティーメイカーズの任務は極秘。如何なる者でも許可なく干渉することは許されていない。場合によっては重い処罰を受けることもある、が。
「こんばんはァ、先輩方」
今回の人物は珍しいケースだ。
なぜなら、彼女もまた邪悪魔女の一人だからだ。
「……シェリルス?」
灰燼の厄介者、シェリルス・シンデレリアだ。
その体には幾つかのケガの痕が見れるが、三人はそんな事など気にしない。
「どうした? おこぼれに預かろうとでもしたか?」
「残念だけど、貴女に食べさせる物はもう残ってないわ。もとより分け与える気もないけど」
「先輩がたはいっつも厳しいぜ、まったく……ま、いいや」
シェリルスは余裕の笑みを崩さぬまま。
「今回おこぼれに預かるのはあんたがたの方だからなァ?」
「……なんだと?」
「どういうこと?」
「ククク……」
静かに笑う。その焦らすような態度にパーティーメイカーズも苛立ちを覚え始める。
「……それで? 結局きさまは何をしに来た」
「……出遭ったんだよ。《戦火の魔女》に」
「……ッ!?」
触手の動きがピタリと止まるカイトラ。
笑みが消え、体勢を変えるシャーカッハ。
上下の口を開き、コップを落とすケムダフ。
三者とも明らかな動揺。
その様子を見て、シェリルスは笑っていた。
【勅令の裏 おわり】