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残酷のアクセルリス  作者: 星咲水輝
6話 なんでもない一日
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#? 外道の軍勢

【外道の軍勢】


 某所。

 薄暗く散らかった『拠点』。お世辞にも広いとは言えない。

 その様子から、この組織は興って間もないものであり、所属人数も少ないことが分かる。


 奥、一際大きい椅子――玉座とでも言おうか――に座すのが一人。

 その側に控えるのが一人。彼女は側近であろうか。

 腕を組み、壁に寄りかかるのが一人。二人掛けのソファに寝転がっているのが一人。

 計四人。全員魔女である。


「バズゼッジ」

 と呼びかけたのは側近魔女。


「ンだよ」

 剣の魔女バズゼッジは寝転がったまま返事。


「貴女の同居人をスカウトするという話はどうなったの?」

「レキュイエムか? イヤだってよ」

「理由は?」

「『組織に縛られるのは嫌いだ』ってよ」

「ははっ、まあ無理もないね」


 口を挟んだのは壁際の魔女。

「魔女機関という組織社会がイヤだから反抗して外道魔女になってるというのに、皮肉にも今度は外道魔女たちが組織を創ったんだから」

「別にアタシは組織社会に反発してる訳じゃねえんだがな」

「まあ、ボクもそうだ。少々戯言が過ぎたかな」


 それだけ言うと口を噤んだ。


「ハン、若造が」

 バズゼッジも軽く毒を吐き、黙る。


「……困ったわね。そろそろ頭数を揃えたいんだけど」

 側近魔女は持っていた資料をめくっていく。

「……コフュンの脱落が大分痛手になってるわね。研究をゲデヒトニス一人に任せっぱなしにするのも申し訳ないし」


 ため息。自由すぎる構成員を纏めるのも一苦労だ。


「ゲデヒトニスの帰還を待つしかない、か」

「……噂をすればシャドウじゃないか?」

「ん?」


 そのやりとりの直後、扉が開かれる。


「我/帰還」

 機械的なほどに効率化された独特の話法。彼女しかありえない。


「ゲデヒトニス! 丁度良かった。スカウト、どうだった?」

「戦果上々」

「何人?」

「計三人」

「おお! 頑張ったじゃない! 早速詳細を聞かせてもらうわよ」


 迅速にメモ用紙を用意。手馴れている者の動き。


「一人目→ソルトマーチ/御旗の魔女←称号」

「へぇ、あいつをか」

「顔見知りなのかい、バズゼッジ」

「ああ、前にちょっと世話になってな」


「二人目は?」

「二人目→メラキー/慈愛の魔女←称号」

「メラキー? こりゃまた意外な」

「彼女がボクたちに協力をしてくれるとは、予想外もいいところだね」


「じゃラストは」

「三人目→クラウンハンズ/吸血の魔女←称号」

「おお……またクセが強いのを」

「何か企んでるに違いないね、うん」


「御旗の魔女ソルトマーチに、慈愛の魔女メラキー、そして吸血の魔女クラウンハンズね。」

 書き留められたそれらの名前を復唱し、頷く。


「皆著名な魔女ばっかり」

「『悪名高い』の間違いだろう」

「よくスカウトできたわね?」

「我/がんばった」

「うんうん、お疲れさま。休んでいいわよ」

「我/帰る」

「気を付けてね」


 報告を終えたゲデヒトニスはすぐに帰って行った。スカウトに相当苦労したのだろうか。


「はあ、また賑やかになりそうだな」

「そうだね。そろそろ新しい拠点を探した方がいいかもだ」

「ここも気に入ってたんだがなァ」

「ボクは真逆だね。散らかっているのを見るとストレスが貯まる」

「フン、どこまでも合わないやつだ」

「フ――そうだね」


 二人が話している間に側近魔女は情報を一通り纏め、今後の展望を考えていた。


「これでまた一歩野望に近づきましたね」


 玉座を見やる。そこに座す魔女は何も言わない。


「ボクらには野望なんて関係ないけどね」

「ゲブラッヘ。不敬よ」

「ボクはボクの目的を果たすためにここにいる。縁がある以上手を貸すけど、到達点には興味がない事を忘れないことだね」

 そう言い残すと壁際にいた魔女――ゲブラッヘは足早に立ち去ってしまった。


「フン、やっぱ気の合わねえ若造だ」

 バズゼッジも立ち去る。


「……どいつもこいつも勝手なことばかり、何故貴女の崇高な目的を理解しないのでしょう?」

 そう語りかけるがやはり返答はない。


「私も行きますね。お疲れ様でした」

 深く一礼し側近魔女も立ち去った。




 残された一人。

 暫くの間黙っていたが、やがてぽつり呟いた。

「全ては――順調ね」

 《戦火の魔女》が、赤黒い目を歪ませて笑った。


【外道の軍勢 おわり】

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