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#5 今、加速する終わりへ
冷たい足音。それが響いていたのは何者もない静かな通路。やがて絢爛な広間へと移る。
「…………」
それを聞き、一人、また一人とその場にいた魔女が、音の主を見る。
「バシカルさん」
呟いたアクセルリス。灼銀の瞳に映るバシカルの顔は、何かを成し遂げ、何かを失い、何かを決意した表情を見せていた。
「遅くなったな」
しかしバシカルは当惑も動揺も見せぬまま、普段と変わりない声色で語る。故に、魔女たちもそれを推し量る。
「剣はここにある」
「……ありがとうございます」
「終局には間に合ったが──猶予は無いようだな」
黒い眼が映すのは、遠景にて魔力を胎動させる戦災の魔神。
「そうだ」
絶対冷帝キュイラヌートが声を返した。
「すぐに始めるぞ。皆、覚悟は良いな」
見渡す。バシカル、イェーレリー、シェリルス、アディスハハ、アクセルリス、カイトラ、シャーカッハ、ケムダフ。邪悪魔女たちの表情は、一様にして固く、そして熱く。
「この戦いで全てが決まる」
言葉は重く、しかし振り切る。
「さあ────世界を救うぞ」
【次回 《49話 Akzer&Answer》へ続く】