表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残酷のアクセルリス  作者: 星咲水輝
37話 戦火の魔女
190/277

#3 戦火の魔女

【#3】



「アクセルリス、只今到着しました!」


 クリファトレシカ99階邪悪魔女会議室、扉が力強く開かれた。


 アクセルリスは入室すると同時に、一様にしてこちらを見る邪悪魔女の面々を見た。

 1iバシカル、2iイェーレリー、3iシェリルス、4iアディスハハ、6iカイトラ、7iシャーカッハ、8iケムダフ、10iキュイラヌート。アイヤツバスを除いた全員が集っている。

 その表情──どこか重く、或いは憐憫に。


「よく来てくれた」

「いえいえ! それでバシカルさん、大事な話って」

「…………《戦火の魔女》の正体が、掴めた」

「────」



 アクセルリスは、一瞬、止まった。


 その一瞬の間に、彼女の中であらゆる感情が渦巻き、混ざり、弾け、消えた。



「──本当、ですか」

「ああ。来てもらったのは他でもない。それを伝えるためだ」

「…………あぁ、やっと──このときが、来たのか」


 アクセルリスは虚ろに宙を見た。幻覚のように浮かぶのは、忘れもしない家族の顔だ。


「これまでにきみをはじめとした残酷魔女が集めた情報と、わたしたちパーティーメイカーズが独自に集めた情報」

「そして繰り返し行われた綿密な調査。それらによってその正体は確定されたわ」

「間違いなく、ね。真実だ、受け止めてほしい」


 言葉を繋げていったのはカイトラ、シャーカッハ、ケムダフ。彼女たちの長い長い夜会が、遂に実を成したのだ。


「はい──ありがとうございます──!」


 アクセルリスは強くそう答えた。



 しばし、想いを噛みしめる。


「────」


 自分一人では届かなかっただろう星。

 魔女機関の──皆の力で、それに手が届く。

 感謝すべきは魔女機関へ、邪悪魔女へ、残酷魔女へ──そして、ここまで連れてきてくれた、お師匠サマ(アイヤツバス)へ。




「……覚悟はいいか、アクセルリス」


 見計らい、バシカルが重々しく言った。

 アクセルリスに迷いはもうなかった。


「はい」



 深く呼吸をし、頷く。



「――それは、最も多くの命を奪ってきた、最悪の外道魔女」


 と、シャーカッハ。


「――それは、頽廃の岡の大戦火を最後に、活動を止め消息を絶った」


 と、カイトラ。


「――しかしそれは蘇り、再びこの世界を喰らおうと動いている」


 と、ケムダフ。


「戦火の魔女、それは――──」



 と。バシカル──その言葉が、不意に途切れる。


 彼女は──――否。バシカル以外も皆、アクセルリスではなく、その後方──会議室の入り口に強い視線を向けている。


「──?」


 そのことにアクセルリスが気付いた時、背後から声が聞こえた。






「それは私」






 アクセルリスにとって、よく聞き慣れた声だった。()()()家族よりも。




「そう、私────アイヤツバス・ゴグムアゴグよ」




 《戦火の魔女(アイヤツバス)》が、赤黒い目を歪ませて笑った。




【戦火の魔女 おわり】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ