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残酷のアクセルリス  作者: 星咲水輝
35話 記録:記憶
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#1 邪執のコンキスタ

 『拠点』。三つの影は、互いに目を合せず、無言の中を過ごす。



 やがて、ひとりが口を開いた。それは鉄の魔女ゲブラッヘ・ルベウス。


「…………もう、終わりだ」


 その言葉に感情はなく。ただ諦めに近い無気力が漂っているだけだ。


「何もない。残ったのはボクら三人と、師匠だけ。もう終わりだ」

「その通りよ、ゲブラッヘ」


 側近が返す。


「この組織は──魔女枢軸は、終わりを迎える」

「なぜそんな平静でいられる?」

「『瓦解』ではない。『終了』だから。魔女枢軸は、その役目を果たした。全てあのお方の思惑通り──とはいきませんが、おおむね、九割ほど」

「ボクはそんなの聞いてないんだけど」


 若干の苛立ち。側近は配慮もなく、答える。


「当然よ。これは私と《戦火の魔女》様だけが知っていたこと。特に貴女には話さない、口が軽いから」

「……イラっと来るね、まったく」


 舌打ちと共に、壁を殴る。何の意味もない、八つ当たりの行動。以前のゲブラッヘには考えられないものでもある。


「……で? じゃあこれからどうするんだい。キミは。そしてボクは」

「自由。好きに生きるといいわ」

「ならそうさせてもらうよ。キミたちの顔を見るのもこれで最後かもね」


 言い捨て、ゲブラッヘは立ち去ろうとした。


 その背に、側近は投げかけた。


「では、伝言を一つ」

「師匠からか? 直接訊くよ、間に合ってる」

「いえ、今言っておかねばならないことです。心して聞くように」

「……で、なんだい」


 鋭い眼で振り向き、側近を目に映す。その口の動きを、まざまざと、見る。


「──『アクセルリスには手を出すな』」

「…………は?」

「以上、それだけよ」

「それだけ、だと……?」


 震えた声で、ゲブラッヘは言った。


「────ッ!」


 如何なる感情か。強く歯軋りし、再び壁を殴りつけた。拳に残った痛みが、ゲブラッヘをあざ笑う。


「…………じゃあね。せいぜいロクな死に方するなよ」


 捨て台詞のように、そう言った。そしてゲブラッヘは姿を消した。




「それで、ゲデヒトニス」


 そんな彼女に感情を残すこともなく、側近はゲデヒトニスへ目を向けた。


「言ったように、貴女ももう自由だけど」

「────我/理解」


 呟き、立ち上がる。


「我/感謝→戦火の魔女」

「ええ、伝えておきます」

「我/依頼←最終任務」

「最後の頼み? なにかあるの?」

「────」


 自由となったゲデヒトニス。その最後の頼み──否、望みとは。



【続く】

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