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#? 冰憐の眼差し、果てへ
「────」
全てが終わった荒野で、アイヤツバスは佇んでいた。
周りでは魔女たちが砦の撤収作業を行っている。
イェーレリーを始め、多数の魔女が負傷した。それでも、安堵の感情か、作業はするりと進みつつあった。
「──」
空を見上げる。雲一つない夜空。
想起するのは、あの『寒気』。
黒龍が齎したあの冷気は──本当に、感覚だけだったのだろうか?
アイヤツバスは、一つ呟く。
「──悪寒、かしら」
そう口にする表情は、依然として、微笑んでいた。
しかし、その腹の内──心の底は。
「────ふふっ」
彼女が心から笑える日は、そう遠くない。