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残酷のアクセルリス  作者: 星咲水輝
32話 彼方より来たるモノ
154/277

#? 終夜のはざまにて

 夜もすがら。

 死んだ妖精の森は静まり返る。動物も、植物も、魔女も、エルフも、皆が息を潜め眠りにつく闇黒の時。


「…………」


 ただひとつだけ、命の鼓動が光っていた。


 それはアイヤツバス工房はアイヤツバスの自室、そのバスルーム。


「…………う」


 流れるシャワーを浴び、アイヤツバスは一人、佇んでいた。

 項垂れる。黄金色の髪はだらりと解かれ、濡れて艶めいている。


「…………あつい」


 少しだけ苦しそうな表情を浮かべ、胸を押さえる。


 その身体、心臓の位置に、赤い幾何学的な紋章が刻まれていた。

 彼女が感じている熱も、ここから成るもの。


「戦火…………ね」


 彼女は忌み名を紡ぎ、少し笑った。


「もう少し……あと、少し」


 言葉はどこか、禍々しい感情を孕む。


「…………今、どこに」



 その瞳の色は、はたして。

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