#5 永久なる相克のウロボロス
【#5】
その日の夜。アイヤツバス工房の食卓。
普段と変わらぬ──「二人」の食卓。
もともとは、この二人の食卓が、当たり前のものだった。
しかし、この一年で、アクセルリスの中では「三人」の食卓が当たり前になっていた。
そしてこの欠乏からなる空虚感は、ずっと当たり前にはならないだろう。
「……ねぇ、アクセルリス」
食事を終えたあたりで、アイヤツバスが切り出した。
「貴女、コフュンのことをどう考えてる?」
「また急な」
「少し、気になっちゃってね」
「まぁ、そうですね……相容れない存在、許してはいけない存在……といったところですか」
その眼に迷いはなかった。
「死んだら終わり。死んでしまったものは、もう生き返らない。それがこの世界の理なんです」
彼女の言葉には、悲し気な力が籠る。
「あいつはその原理を、根底から覆してる。そんなの、あってはならないこと」
「成程ね。確かにそう」
「だから殺します。何としても、殺します」
残酷な鬼気を見せるアクセルリス。しかしアイヤツバスは、対照的な笑みを零した。
「……ふふっ」
「な、なんですか」
「いえ、思った通りのことを言ってるな、って」
「むっ。お師匠サマ、わかってて聞いたんですか。いじわるだー」
「ごめんなさい。でも、聞けて良かったわ。アクセルリスがアクセルリスらしくいられてるのが聞けて」
「……変わりませんよ、私は。あいつにも、そう言われたので」
右目を抑える。心なしか、熱い。
「────ええ、それがいいわ。きっと、ね」
アイヤツバスもそう言って、小さく笑った。
【彼方より来たるモノ おわり】