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残酷のアクセルリス  作者: 星咲水輝
30話 残酷スクランブル!
130/277

#1 前兆のプロフェティア

【#1】


 ある日。


 ここは魔女機関本部、クリファトレシカ。

 その97階、残酷魔女本部である。


「しかしまあ、珍しいものだな」

 隊長シャーデンフロイデは己の席に座り、そう言う。


「ん? 何がですか?」

 残酷のアクセルリスは山積みの菓子を漁りながら、尋ねた。


「任務もないのに皆が集まっていることだろ?」

 黒き獣グラバースニッチは部屋の隅でトレーニングをしながらそう返す。


「言われてみれば確かに、最近こんな事ありませんでしたわね」

 絢爛令嬢ロゼストルムはソファでゆったりと。


「まァ、いいんじゃないかしらぁァぁァ? たまには……」

 天才人形師アガルマトはソファの淵にしゃがみ込み、人形を愛でながら。


「休息も進化。安らかな時間も、また進化だな」

 進化の使徒イヴィユは相も変わらぬ調子でいる。


「…………」

 そして副隊長のミクロマクロは、いつもの様にソファで横になっている。


 残酷魔女たちの、珍しい一面。

 彼女たちも、こうやって皆で安らぐこともあるのだ。

 命を懸けた戦いの多い職務だからこそ、このような時間を大切にするのだ。それは創立者であるバシカルの主義でもある。


「菓子は食べているか? 期限切れも近い、このような機会に消費してくれればありがたいが」

「問題ありませんわ、シャーデンフロイデ。アクセルリスが全部吸い込む勢いで食べてますから」

「え? ぜんぶたべていいんですよね?」


 そういう最中にも、菓子が次々と消えていく。


「……期限が切れる前に食べきっては欲しいとは言ったが、一応8人分の量なのだが……」

「8人分ですか、道理で少ないと思いましたよ!」

「……」


 シャーデンフロイデは目を細めて絶句する。あのシャーデンフロイデが、である。


「シャーデンフロイデ……」


 そんな彼女を気遣うふうに、ロゼストルムが言う。


「アクセルリスはもう、私達が理解できる領域を超えていますわ……」

「かもしれないな」


 そんな言葉も気にせず、アクセルリスは捕食を続けていた。


「ははは、豪快でいいじゃないか!」

「ああ。食事とはすなわち進化だ。私も負けていられない」

「げ、限度があると思うけどぉォ」


 とまあ、いつになく平穏に、残酷魔女たちがくつろいでいた。


「まあ、今日は平和も平和ってことっぽいな。何よりだ」

「…………いや」


 口を開いたのはミクロマクロだった。いつの間にか目を覚ましていた彼女は、窓際で常夜景を見下ろす。


「こういうときだからこそ、なのかな。何か嫌な予感がする」

「冗談はよせ、ミクロマクロ。せっかくの機会なんだ、雰囲気を壊す様なことはあまり──」


 だが、そのグラバースニッチの言葉を妨げるようにして。


「やっぱり、ミクロマクロの勘はすごいね」

 敏腕エンジニアのアーカシャは、真剣な眼差しで手元の伝気石を見下ろしている。


「え?」

「たった今、ヴェルペルギース内で同時多発暴動が起こった。その全てから魔女の反応が見られている、と」


 たちどころに空気が凍り付く。


「続けろ、アーカシャ」

「魔女の反応は6つ。うち4つはそれぞれの地区で暴動を継続、2つが……クリファトレシカに向かってきてる?」

「アガルマト、確認を急げ」

「お、終わってるわよぉォぉ……それぞれの魔女の位置、掌握したわぁァぁ」

「良し──ならば」


 シャーデンフロイデは素早く立ち上がり、一同を見渡す。


「緊急任務だ。ヴェルペルギース内に現れた、暴動を起こす6人の魔女。それらを鎮圧し、捕縛せよ」


 彼女たちの目つきが変わる。


「グラバースニッチは東、イヴィユは西、ロゼストルムは南、ミクロマクロは北へ。私とアクセルリスは移動する2人の魔女を追う」

「了解だッ!」

「了解した」

「承りましてよ!」

「かしこまりー」

「了解です!」

「アーカシャ、敵対魔女の情報検索と魔女機関内での連絡を。アガルマト、道中の案内を頼んだ」

「任されたよ」

「わ、わかったわぁァぁ……」


 残酷魔女たちが、起動していく。

 

「折角の機会だったが、我々の仕事は道を外れた魔女を処断すること。ヴェルペルギース内に多数出現したともなれば、街の、民の、ひいては魔女機関の危険が懸念される」


 シャーデンフロイデは固く、強く、そう言う。


「だからこそ我々が動くのだ。残酷魔女としての矜持、ゆめゆめ忘れるな」


 残酷魔女たちも皆、頷く。


「良し」


 深く息を吸い、そして──叫ぶ。


「では──出動!」



【残酷スクランブル!】

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