#4 交錯する外道の思惑
【#4】
「ソルトマーチ」
「如何した」
某所。ソファで身を休めるソルトマーチに、側近は声をかける。
「なぜアクセルリスに接触したの? 邪悪魔女への必要以上の干渉は避けろと何度も言ってるはず」
「その事については謝罪しよう。そして安心しろ、私は鋼の魔女アクセルリスを殺す気は無い」
「では何が目的なの?」
「単純な興味だ。戦火の魔女への復讐を果たそうとする、生存本能の化身。それがどんな者なのか、な」
動じる様子を見せることなくソルトマーチは言い切った。側近は無言のまま首を振る。
「まったく、何を考えてるか分からんね」
向かいのソファからそうヤジを飛ばしたのはバースデイだ。
「貴女も大概よ、バースデイ」
「ン、そうか? お互い様か、ハハ」
「ふ。我々は共に外道魔女に身をやつす同志。それぞれに価値観はあるだろう」
「……はぁ、とんだじゃじゃ馬たちだわ……」
側近は頭を抱えながら離席した。尖り者だらけの魔女枢軸を纏めるのも楽ではない。
「ときにバースデイよ」
「どうした?」
「少し頼みたいことがある」
「ま、聞くだけ聞いてやろう」
「汝の力を借りたい」
「高くつくぞ?」
「構わん。して、内容は──」
ソルトマーチの頼みを聞き届けたバースデイは目を閉じる。
「──まあ、その程度なら初回特典で無料にしてやろう」
「助かる。では、時が来たらよろしく頼む」
ソルトマーチも離席。バースデイは静寂の中目を閉じ続ける。
──が。
「ごきげんよう、バースデイさん」
「──メラキーか」
目を開くことなく、声色と口調で新たな来客を悟る。
「なんだ? お前も頼みごとか」
「頼みごと……とは少し違うのですが──」
メラキーの言を聞き届けたバースデイは、思わず目を見開く。
「構いませんか?」
「あ、ああ……私としては構わないが」
「助かりました。では、よろしくお願いします」
優し気な笑みを浮かべてメラキーは席を立った。
一人静寂の中、バースデイは呟く。
「……恐ろしい女だ」
【英雄を目指した者──否 おわり】