#3 禁断の果実とは
【#3】
その夜。
アイヤツバス工房にて食事を共にした三人と一匹。
泊まることにしたアディスハハも一足先に床に付き、トガネも眠りに落ちた、深い夜。
「……お師匠サマ」
アクセルリスは問うた。
「なにかしら?」
「御旗の魔女ソルトマーチについて、何かご存じですか」
「まあ、ぼちぼちはね?」
「奴について色々教えてほしいんです!」
弟子の勢いにアイヤツバスもやや圧される。
「いいけど、どうしたの?」
「実は!」
アクセルリスは今日の出来事を洗いざらい話す。
ソルトマーチの態度。姿勢。そして言葉。
「……なるほどね」
知識の魔女、一を聞いて十を知る。
「それで、あなたはどうしたいの?」
「ソルトマーチを言い負かします!」
アクセルリスに迷いはない。
「なら、私が教えられること全てを教える。そうすれば、あなたの望むことができるようになるわ」
「本当ですか! 流石お師匠サマ!」
「……ただ」
「ただ?」
「一晩みっちり教え込むから、覚悟してね?」
メガネの奥の眼差しが、妖しく鋭く光る。
「……っ」
アクセルリスは深く息を呑む。この眼光は、修業時代によく見たものだ。
そして、それの意味も、よく知っているのだ。
「…………お願いします、お師匠サマ!」
アクセルリスは覚悟を決め、強い銀の瞳でアイヤツバスを見た。
【続く】