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応戦

「小野くん、状況確認だ。」

『はいっ。』

「一体、何者だ…」

『襲撃者の制圧が終われば、我が調べる。目の前の状況に集中しろ。』

 ハルに諭され、思考を切替える。

 小銃を携えた覆面が視界の隅に映り、振り返りながらスタン手裏剣を呼び出し、投げる。

 人影は幾つか見えた気がするが、確認している時間が勿体無い。

 手裏剣が見えた男にヒットするが、スタン効果は現れない。

 防刃ベストでも着込んでいるのだろう。

 俺に引き金を引き、銃弾が出ないことに焦っている。

 小銃の先には銃剣が装備されているのが見える。

 その間に俺は接近し、新たに呼び出したカランビットで右肘の内側を掻き切る。

 スタン効果が発動するが、身体の末端部なので、右半身が縮み上がるだけにとどまる。

 銃が無力化されているなら、ほぼ無力化できたと考えて良いか。

 それよりも、視界に映る他の人影への対応が先だろう。

 こちらは、戦術も戦略も皆無だ。

 それでも最善手を探っていかなければ、俺の命は無い。

 机を挟んだ位置にいる男からスローイングナイフが投擲されるのを、身体を捻って何とか躱す。

 試用のアクティブプロテクションは一回で使い切りの仕様のため、躱さなければならない。

 ここで障壁を展開しても、敵を接近させる時間を作るだけだ。

 素手ならば机に乗って飛びかかるところであるが、銃剣相手では足を狙われてしまう。

 右側から既に机の列からこちら側に来た男が近づいてくる。

 机を挟んだ男が銃をストラップから外して突いてくるのを予想し警戒しながら近づく男の対応のため、向き直る。

 殺さないで制圧するのは不可能に近いか。

 まだ人を殺すのに忌避感はあるが、命には替えられない。

『敵は四人です!』

「俺を入れてないか!?」

 正面の男は銃剣をこちらに向けて、突っ込んでくる。

『赤外線で人影が五人分あります。』

 目の前の男達が制圧すれば、視界に入っていない男に手榴弾なり爆発物を投げ込まれそうだ。

 だが、対策を考える間もなく目の前の男への対応を迫られる。

 突き出した銃剣を左手でいなすが、身体の内側に捌いてしまう。

 そのまま払いながら何とか中心線を確保できたが、距離があるため刃は届かないので、右踵で顎を狙う。

 踵は顎を捉える寸前、障壁を展開されて止められる。

 スペルシェルと呼ばれる戦術魔法障壁だ。

 俺の障壁は多重展開しやすいように平面にしているが、この魔法は概ね教練でパッケージ化されており、半球に展開させることが多く、展開も速い。

 追撃をする間もなく、机を挟んだ位置から背後に回り込んできた男への対応を迫られる。

『ハル、ぶち破るまで、連射だ。』

 振り返らず開いた左手を突き出し、至近距離から制圧用クレイモアを撃ちながら正面の男に向かっていく。

 二発目は障壁を押し出しながら射ち込む。

 三発目で切れかけた障壁を撃ち破るように鉄球が男を打ちのめす。

 正確には撃ち破った訳ではなく、この手の障壁は次の行動を阻害しないよう短時間の展開をするのがセオリーなのだ。

 左手を防御に回しながら振り返ると、大きく振りかぶったコンバットナイフが迫っている。

 体制を崩したまま肩から突っ込んでいく。

 男の腕が俺の後頭部を叩く。

 何とか刃は躱せたが、そのまま地面に倒れ込む。

 逆手持ちだったなら、追撃が来るが、間合いを取るため順手で持っていた。

 身体を捻り続け、仰向けになったところで、地面が背を叩く。

「クレイモア。」

 それと同時に制圧用クレイモアを下から撃つが、障壁で阻まれる。

 立つ時間は確保できたが、障壁の向こうで別のナイフを取り出すのが見えた。

 既に距離が取られており、クレイモアとの撃ち合いになれば、スローイングナイフなら同士討ち、スペツナズナイフなら俺の負けだろう。

 他にはこちらが障壁を展開するかだ。

 さて、どうしようか。

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