立食パーティー
迎えの車に乗り、街の外れのレストランに案内される。
広い庭園に古風な建物が見える。
コートの下にカクテルドレスを着たダナが迎えに立っていた。
『めちゃくちゃ可愛いですよ。ギンタ様。』
『そう?』
『だろ。俺の見立てもなかなかのもんだろ。』
ギンタは胸元から喉元までと、両腕の部分がシースルーとレースでできた黒いカクテルドレスで、喉元のチョーカーが可愛い。
その上から白い毛皮のコートを羽織っている。
「ダナさんもとっても綺麗ですよ。」
小野くんが言葉が分からないながら何だか空気を読んだのか読めてないのか分からないがダナを褒めている。
今日は貸し切りで、誰もいないウェイティングバーを通り、中に入ると人狼族達が並んで頭を下げて俺達を迎え入れる。
人狼の姿でいるのは、二割程度か。
ギブンタスが先頭に立ち、グラスが行き渡るのを見計らい、話し始める。
『スズキ様。300年前に我ら人狼族を救い、魔人を倒した英雄。再び我らは貴方様を我らの英雄としてお迎えいたしたいと思います。』
『断わる。』
レストラン全体がざわつく。
『昔だって、そんな扱いは断ってきた。』
『では、どうすれば…』
『俺が求めているのは、対等な友人だ。』
英雄扱いなんされても面倒だし、気を使われるのも、使うのも勘弁して欲しい。
『友人と?』
『ああ。まず、友人として、ギンタを育てて、守ってくれた人狼族に礼が言いたかった。本当にありがとう。』
『それでは、改めて、我ら人狼族の友人として再び交誼を結び、共に幸あらんことを!』
乾杯に進む前に、ギブンタスに目配せし、ギンタを前に出す。
『我らが人狼族の守り神たる黒竜、ギンタ様から皆へ言葉がある。』
『100年前にいた者はここには居ないが、それまで、私は皆に助けられた。悲しい事件があったが、私を守り死んでいった者達に感謝するとともに、彼等の冥福を祈る。そして、長い時間がかかったが、再び我ら親子がここを訪れることができた。父からもあったよう再び朋友として共に在りたい。』
『長き時間を超えた我らが友の再会を祝し、乾杯!』
人数が多いので、立食となっていたのは少し残念だ。
突きながら、来る者と会話を交わしていく。
カールリスの上司だというエリヤと名乗る人狼型の男が俺の足を止めにかかる。
『カールリスが無礼な事をいたしましたが、このところのぼせ上がっていたところもあったので、これで奴も頭を冷やすことができるでしょう。』
『まあ、奴じゃなかったら、誰をぶつける積もりだったんだい?』
『元々、私が貴方に腕試しをお願いする予定でした。』
『そりゃ、良かった。君じゃなくて。』
『カールリスよりは強くとも、無傷で一方的に倒せるような差はありませんよ。』
フォークに刺したままの肉を口に放り込み、そのまま飲み下して、言葉を続ける。
この手の奴に控えめに出ても面倒なだけだろう。
『経験の差で何とかなっただけですよ。潜った修羅場の数が違いますからね。』
多少の威圧を籠めてそう言うと、彼は下がっていった。
その会話を聞いた回りがまたざわついている。
カールリスの件も、それで一つ問題が片付いたのだから、良しとしておこう。
程よく酒も回り、いい時間になってきた。
ギンタもいることだし、そろそろお暇したい旨を伝えると、明日のスケジュールを伝えられてから、車でホテルへ送ってもらうことになった。
小野くんは置いてきたが。
改めてシャワーを浴びてベッドに潜り込む。
『せっかく美味しい店だったんだから、立食パーティーより、落ち着いて食べたかったな。』
『うん。』
『また、明日か明後日の晩に行こうか。』
『楽しみにしてる。今日はもう寝る。』
「おやすみなさい。」
「ああ。おやすみ。」
挨拶は日本語でするのはちゃんと癖づいているようだ。
本日のご飯
○夕食(外食)
・立食パーティー




