雇用した二人
五指が動く義手については、まだ、『力場』を扱えるようになっておらず、物質としてそのままコピーしたものを装着している。
少しの練習だけでハルの補助を受け、全く問題なく動かせるようになっている。
佐伯医師がこれを見たらどんな反応をするだろうか。
触覚などの感覚が無い違和感が残るが、日常生活にま支障ない。
というか、ハルはどうやってサポートをしてくれているのだろうか。
真剣に考えると寝付けなくなりそうだ。
各サイトは順調にアクセス数を伸ばしており、ホームページスペースの容量も限界に近づいてきている。
機能追加より、容量増への対応を先にしなければならなくなってきた。
まだレンタルサーバ業も生まれておらず、これ以上の拡張はもう自前サーバの立ち上げしかない。
ここからはスピードとの勝負だ。
駅前にオフィスを借り、自前サーバ群の構築をに着手する。
19インチラックは、まだ大規模メーカーでしか取り扱っておらず、かなり高額になるので、こちらは諦める。
市販のスチールラックを組んで、小型パソコンでサーバ群を構成していくことにする。
定電圧CPUのものを選び、10台まとめて発注し、とりあえず、サーバ群の構成をテストできる程度の実機を準備する。
テストが終われば、金策から手を付けていかなくてはならない。
生活扶助から復帰したばかりの俺からすると、最も困難な課題になりそうだ。
ロードバランサは非常に高価なメーカー製しか無く、NASはまだ専用製品も出ていないので、すべて自作で準備することになる。
バックアップやトラブル対応の方法も検討が必要だろうが、まだ、メンテナンス停止をしても許されるぐらいの規模なので、後回しにする。
専用回線の接続契約も済ませ、準備ができた頃、『じめ速』のアクセス数の増加により、期限付きの退去通知が出されてきた。
ドメイン取得も済んでおり、テストを済ませれば、いつでも移行できる。
現サイトにサーバ移転のお知らせと共に、求人を募る。
キュレーションサイトのみなら、何とか維持していくこともできるだろうが、掲示板サイトについては、自分自身全く興味が無いのだ。
興味も情熱も無いものを、これ以上の発展をさせるのであれば、興味と技術がありそうな人間を自陣に迎え入れる方法以外に無いだろう。
以前いた世界でも、SNS等は殆ど使ったことがないのだ。
掲示板サイトの利用者から、一人の正社員と、一人のアルバイトを雇用することになった。
年度替わりの時期だったのもあったのだろうが、さほどの苦労も無く技術を持つ二人を雇用できたのは幸運だった。
・小森 明雄 20歳
コンピュータ関係の専門学校を卒業後、コンピュータ教室の講師をしながら、就職先を探していたとのことだ。
彼は、正社員として事務所に常駐することになる。
・小野 秀人 29歳
そこそこの大学卒で、就職に失敗してから親の脛をかじって生活している。
実家はかなり裕福なようで、特に金は困っていないようだ。
フリーOSの開発にも参加した経験がありスキルは全く問題ないのであるが、コミュニケーションに難がある。
まぁ、顔を突き合わせていれば、慣れてくるだろう。