収入
朝から『まじめ速報』用のニュースネタのチェックリストをチェックする。
巡回プログラムがリストアップしたカテゴリや事件別の仕分けをしたうえで、転載にならないようコメントをメインとしてリンクをアップするのが、ここ最近の毎朝の日課である。
たまにハルが面白いページを探してくるので、それもコメントを付けてアップしていく。
今はまだ転載に対する制度設計や対応をしている新聞社が少ないが、今後は二次利用に対する考え方や制度も整備されてくると予想されるので、アップはリンクのみである。
『ふまじめ速報』の方については、記事は利用者が勝手に引用してアップできるようにしているので、こちらは監視のみの作業となっている。
まだ、Web翻訳なんてサービスもないので、海外記事は目についたものしかアップしていないのと翻訳記事を掲載できていないのだが、これは今後の課題としておこう。
新聞や報道関係のサイトでも、まだ記事の量も少なく、更新も非常に遅いが、キュレーションとして集めることにより、使い勝手は向上していると思われ、アクセスが伸びてくれている。
気が付けば、サイトのアクセス数も先週に万を超してから、更に勢いを増して伸び続けている。
この調子で行けば、来月にも生活扶助を受けなくてもよくなりそうだ。
基本的に生活出来るだけ儲けれれば良いと思ってはいるが、安定した収入を得るためにはもう少し事業化なりも検討すべきだろう。
また、現在は記事は3ヶ月しか掲載されていないのが一般的なので、長期間記事を蓄積し、全文検索できるようにすることで、更なる差別化を図る予定であるが、その容量確保のためには、自前のサーバーが必要になり、それらの運営、管理を考えると事業化は必須だろう。
まだ、有限責任会社と最低資本の制度が残っており、株式会社の最低資本がまだ高額なこともあるので、有限責任会社として運営していくことにする。
「すごいですね、鈴木さん。ホームページでお金を稼げるなんて知りませんでした。」
ケースワーカーの小川さんと窓口で話をしている。
今月から広告収入が平均収入を超えることとなったため、生活扶助の終了の手続きに来ているのだ。
「考えていたアイデアがたまたまあたっただけですよ。まだまだ、何とか生活できるレベルまでこれたのは運が良かっただけです。」
「でも、私としても非常に嬉しいです。」
「いえいえ、知り合いがほとんどいないので、寂しくてついつい長話で引き留めることも多くてすみませんでした。」
「仕方ありませんよ。鈴木さんの境遇はかなり過酷なものですから。」
若くて可愛い女の子がいればついつい長話をしてしまうのも、仕方がないだろう。
許して欲しい。
ここしばらく、部屋に篭もり、禁欲生活が続いている。
そろそろ人肌が恋しくなってきたぞ。
「それじゃ、さよならですね。長い間ありがとうございました。」
少しだけ小川さんが寂しそうな顔をしてくれたのが嬉しかった。
コートを羽織り、市役所を後にする。
この時代に着いた時はまだ初夏だったが、もう木枯らしの吹く季節になっていた。